【超入門】ドローンの点検業務とは?基本からメリット・業務内容までを解説
公開:2024.07.02 更新日:2024.07.09
ドローン建物点検
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ドローンを使った点検は建造物や構造物の外観や状態を上空や側面から確認し、損傷や劣化を発見してくれます。高解像度カメラや赤外線カメラを使用して、高精度な点検を実施可能な点検手法です。
ドローンが空撮以外にも使用できるということは把握していても、点検業務ではどのように使われているかピンと来ていない方も多いのではないでしょうか。
ドローン点検は建設業界や不動産業界、設備管理業、運輸、交通業界などさまざまな業界で利用できるため、ドローンを活用した点検業務は常に注目されています。
本記事では、実際にドローンで点検すると何が良いのか、どんな点検手法があるのかなど、ドローン点検の基本的な点からメリットまでを詳しく解説します。
従来の点検方法とドローン点検の違いは?
従来の方法とドローン点検の違いは点検内容によって異なりますが、ほとんどの点検内容で共通するのは安全性が高くなることです。
基本的に従来の方法では点検を実施するために足場を組んでの高所作業や危険な場所で作業員が人力で行う点検が多く、落下や事故のリスクが高いという課題があります。
一方、ドローン点検ではドローンを操縦する作業員は地上に居たまま、作業員が登らなければいけなかった場所をドローンのカメラを使用して点検が可能です。そのため、危険を犯して点検を行わずに済み、安全性が大幅に向上します。
従来の点検方法よりも効率が一気に上がる
効率性の面でも、ドローン点検は従来の方法よりも優れています。
従来の方法では足場の設置や高所作業車の手配が必要で、準備や撤去に時間がかかりがちです。しかし、ドローンは迅速に現場に飛行し、短時間で広範囲の点検が可能です。1日で複数の現場を回れるため効率よく点検業務を回せます。
コスト面でも、ドローン点検は従来の方法よりも有利です。従来の方法では足場設置や高所作業車の使用、作業員の人件費などが高額になり、点検を実施すること自体が難しい場合も多いです。
一方、ドローン点検では足場や高所作業車が不要で少人数での作業が可能なため、コストを大幅に削減できます。
ドローンに搭載する高精度カメラで、点検精度もアップ
ドローン点検は、精度においても従来の方法を上回ります。
従来の方法では目視や打診調査で点検業務を実施することが多く、肉眼等では確認しきれない細かな損傷や劣化の発見が難しい場合があります。
ドローン点検では高解像度カメラや赤外線カメラを使用するため、肉眼では見落としがちな細部まで確認可能です。撮影データに対してAI技術を適用して処理すれば、劣化の自動検出も可能です。
ドローン点検は即時での対応が難しい
ドローン点検には即時対応の難しさという課題があります。
従来の方法では作業員が現場にいるため、異常を発見した場合、その場で応急処置や修理が可能です。
一方、ドローンは異常を発見してもその場での修理や応急処置はできないため、別途作業計画や修繕の手配が必要になります。
また、ドローンで行う点検は立入管理を行う際の警察署とのやりとりや、国土交通省への飛行許可承認申請などの事務手続きがあるため、依頼されたからと言っても数日単位で実行するのは困難です。
ドローンで出来る点検の種類
ドローンの活用により、様々な分野での点検が安全かつ効率的に行えるようになりました。
ここでは、建築物の点検、橋梁やトンネルなどのインフラ点検、送電線や鉄塔の点検について、ドローンを用いた点検の事例や利点を詳しく見ていきます。
建築物の点検
高層ビルや大規模施設の外壁は、経年劣化により様々な損傷が発生します。ドローンを用いた外壁点検は、足場やゴンドラを必要とせず、安全かつ効率的に点検を行うことができます。
また、一軒家等の屋根点検でもドローンを活用可能です。実際に、それぞれがどのように活用されているのかをご紹介します。
高層ビルや大規模施設の外壁点検におけるドローンの活用
高層ビルや大規模施設の人力で行う外壁点検は足場の設置や高所作業車の使用が必要であり、加えて打診や目視での点検に長けた作業員の参加が不可欠です。
ドローンを使った外壁点検では、作業員の安全性を確保しつつ、短時間で広範囲の点検を行うことができるため、大幅なコスト削減にもつながります。
従来の方法と比較すると、足場設置費用の削減、作業時間の短縮、点検頻度の増加による予防保全の実現など、多くのメリットがあります。
ドローンに搭載された高解像度カメラにより、外壁の細部まで鮮明に撮影することができ、ひび割れや剥がれ、シーリング材の劣化などを的確に確認可能です。
例えば、0.1mm幅のひび割れも検出可能な高精細カメラを使用することで、目視では見落としがちな微細な損傷も発見できます。
赤外線カメラを使用することで、外壁の断熱性能の低下や、雨漏りの原因となる水の浸入箇所も特定可能です。温度差を可視化することで、断熱材の劣化や水分の侵入による温度異常を検出し、潜在的な問題を早期に発見できます。
このため、赤外線カメラを搭載したドローンによる点検は、建築法の義務となっている通称12条点検と呼ばれる定期検査などの手法として採用されることも多いです。
住宅屋根の損傷・劣化等の点検
住宅の屋根は風雨や紫外線などの自然の影響を直接受けるため、非常に経年劣化が進みやすい部分です。定期的な点検により屋根の損傷を早期に発見し、適切な補修を行わなければいけません。
自身も建築業を営み、作業員として稼働する筆者の父に話を聞いたところ、2階建て程度の一軒家であれば足場を組まずハシゴで屋根まで登った方が予算も時間も少なく済むため、ハシゴの活用面が多いそうです。ハシゴを使うことが多い分、やはり危険性は高いとのことでした。
ハシゴを使わず足場を組んで屋根点検を行う場合であっても、近隣の住民に屋根点検である旨を共有したり、周辺の道路の交通等に配慮したりする必要があるため、予算や手間を考えると非常にロスが多くなりやすいです。
そのため、ドローンで行う住宅の屋根点検は非常に需要があります。
高解像度カメラを搭載したドローンを使用して、屋根の上空から詳細な画像を撮影します。撮影した画像を解析することで、瓦のずれや割れ、釘の浮き上がりなどの損傷を特定することができます。高解像度カメラを搭載したドローンを使い屋根の上空から撮影すれば、実際に作業員が屋根に登らなくとも屋根の現状を把握可能です。
カメラ自体の解像度も高いため、撮影したデータを解析したり拡大したりすれば、より細かい部分の問題もチェックできます。
実際、ドローン屋根調査点検を行っている株式会社エムプランニングでは、瓦が破損した家屋屋根の状況をドローンで調査しています。瓦が既に破損している状態で作業員が登ると、更に屋根の破損が加速してしまう可能性が高いですが、ドローンで調査することで、屋根の破損状況を維持しつつ安全に屋根の状況を把握しています。
■参考リンク:練馬区 屋根・瓦破損調査のドローン写真(ドローン屋根調査点検エムプランニング)
住宅屋根の断熱性、雨漏りチェック等の赤外線カメラ搭載のドローン点検
屋根の断熱性能の低下や雨漏りの原因を把握したい時は、ドローンに赤外線カメラを搭載して点検する手法がオススメです。赤外線カメラを撮影箇所の温度がサーモグラフィー出力された状態で撮影できるため、温度の高低を解析すれば原因となっている箇所を手軽に発見可能です。
屋根点検で発見された問題への対処は、損傷の種類や程度によって異なります。
軽微な損傷であればその場で補修材を使用した応急処置で対応できる場合もありますが、重度の損傷や雨漏りが確認された場合は、後日に本格的な補修が必要です。
ドローンで撮影したデータは、後日の本格的な修繕を行う際の事前情報としても活用できます。
橋梁やトンネルなどのインフラ点検
橋梁やトンネルは、社会インフラとして重要な役割を担っています。これらの構造物の点検は、安全性の確保と維持管理のために欠かせません。ドローンを活用することで、効率的かつ安全な点検が可能となります。
橋梁の桁下や支承部の点検におけるドローンの活用
橋梁の桁下や支承部は、作業員によるアクセスが難しく、細かな点検が困難な場所です。
狭い点検に向いたサイズの点検用ドローンを使用すれば、これらの場所であっても安全かつ効率的に点検することができます。
赤外線カメラを使用するとコンクリートの剥離や鉄筋の腐食などの劣化も発見できるため、肉眼で見ただけでは把握しきれない問題を特定したい橋梁点検にぴったりです。
国土交通省が実施した実証実験では、ドローンを用いた橋梁点検が従来の点検方法と比較して、作業時間を80%削減できることが示されました。
トンネル内部の覆工コンクリートの点検におけるドローンの活用
トンネルの点検では、覆工コンクリートのひび割れや剥離、漏水などが問題として取り上げられやすいです。
トンネルの中ではGPSが通りづらいため通常のドローンではなく、点検に特化したドローンを使用すれば、トンネル内を効率的に点検することができます。
高解像度カメラで覆工コンクリートの状態を詳細に撮影し、赤外線カメラを使用することで、漏水箇所やコンクリートの剥離も発見可能です。
実際に東京メトロがシールドトンネルへのドローン点検を実施しており、シールドトンネルの上部や、立坑、トンネル上部の換気用通風孔など、従来アクセスが困難だった箇所の点検が可能になり、ドローンによる撮影で得られた動画や写真を活用することで、経年変化の把握や将来的な予防保全に役立つデータの蓄積が可能になりました。
■参考リンク:非GPS環境下におけるドローンを活用したトンネル検査を開始!将来を見据えた自律飛行型ドローンの開発に着手します!(東京メトロ)
太陽光パネルや風力発電設備などエネルギー施設の点検
再生可能エネルギーの普及に伴い、太陽光発電所や風力発電設備などのエネルギー施設が増加しています。これらの施設の点検にもドローンが活用されています。
広大な太陽光発電所におけるドローンを用いた効率的な点検
太陽光発電所は広大な敷地に多数のパネルが設置されているため、点検に多くの時間と労力を要します。この太陽光パネル全体への点検にドローンを活用すれば、効率的に点検を行うことができます。
点検の手順は外壁点検と同様ですが、太陽光パネルの特性に合わせて、赤外線カメラを使用することが効果的でよく利用されています。赤外線カメラを使用することで、パネルの発電効率の低下や、パネルに発電効率を下げる異常「ホットスポット」の有無などを発見することができます。
点検結果は発電効率の改善や、パネルの交換時期の判断などに活用されます。また、定期的な点検を行うことで、発電量の維持や、事故の未然防止にもつながります。
高所にある風力発電設備のブレードや塔体の点検におけるドローンの活用
風力発電設備は高所にあるため、点検が困難な場合が多いです。ドローンを活用することで、ブレードや塔体の点検を安全かつ効率的に行うことができます。
太陽光パネルの点検と同様、風力発電設備の構造に合わせて、飛行ルートや撮影ポイントを決定する必要があります。
点検で取得したデータはブレードの交換時期の判断や、塔体の補修計画の立案などに活用されます。
工場やプラントの内部点検
工場やプラントの内部には大型の機械設備や複雑な配管システムが存在し、これらの点検は安全性と効率性の面で課題があります。ドローンを活用することで、これらの課題を解決し、より効果的な点検が可能になります。
工場内の大型設備や配管の点検におけるドローンの活用
工場内の大型設備や配管は高所や狭小空間に位置していることが多く、人が直接点検するには危険が伴います。ドローンを使用することで、これらの場所に安全にアクセスし、高解像度カメラや赤外線カメラを用いて詳細な点検を実施することが可能です。
ドローンを使用する際は、工場内の電波環境や飛行空間の制限など、安全面での規制に十分注意して点検しなければいけません。また、ドローンの操縦者は適切な訓練を受け、必要な資格を取得している必要があります。
点検の結果、設備の劣化や配管の漏れなどを早期に発見し、適切なメンテナンスを行うことで、事故や生産ラインの停止を未然に防ぐことができます。点検で得られたデータは、設備の稼働状況や寿命予測などに活用され、メンテナンス計画の最適化や予算管理に役立ちます。
煙突や貯蔵タンクの外面点検におけるドローンの活用
工場やプラントには、高い煙突や大型の貯蔵タンクが存在します。これらの外面点検は、従来、足場を組んだり、高所作業車を使用したりする必要がありましたが、多大な時間と労力を要していました。ドローンを活用することで、短時間で効率的に点検を行うことが可能です。
例えば、出光興産株式会社 千葉事業所では、UTドローン(超音波探傷器を搭載したドローン)を活用してタンクの肉厚測定を実施し、高所での危険作業を減らし安全かつ効率的に点検を実施しています。
■参考リンク:プラント設備等におけるドローンを活用した点検事例集(厚生労働省)
ドローンに搭載された高解像度カメラで撮影した画像を解析することで、煙突の亀裂や腐食、タンクの塗装の劣化などを詳細に把握することができ、適切な補修計画の立案に役立ちます。
まとめ:ドローン点検は今後更に導入率が増えていく点検手法
ドローンを使用した点検方法は業務効率化が進むだけではなく、作業員の安全性を確保したり、足場を組む際などに必要なコストを削減したりと、さまざまなメリットが発生します。
もちろん、人力で行うべき点検があるのは事実です。しかし、今後ドローンによる点検で問題無い点検内容では、更にドローン点検の導入率が増加していくことでしょう。
ドローン点検は今後、ますますテクノロジーが発展していく分野です。自分の業務にドローン点検を導入したいとお考えの方は、本記事を参考に、実際どのようにドローンを活用したいかをイメージしてみてください。
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この記事を書いた人
DJI CAMP スペシャリスト民間資格取得/webライター
2022年にDJI CAMP スペシャリスト等の民間資格取得し、 インストラクターとして登録講習機関の国家試験学科対策テキストを執筆。 現在はメンターやライターとして活動中です。 ドローンは難しく聞こえがちな言葉が多いため、 初心者でもわかりやすい記事を執筆するドローンライターを目指しています。 https://x.com/seri_nonnon