そのまま使用して大丈夫?ドローンの業務利用時に注意すべき、航空局標準マニュアルとは

公開:2024.08.06 

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ドローンの業務利用時に注意すべき、航空局標準マニュアル

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航空局標準マニュアルは、国土交通省航空局が公開している無人航空機(ドローン等)の飛行に関するガイドラインです。

航空法に基づく許可・承認を受けてドローンを飛行させる際に必要となる手順等が記載されています。安全な飛行を確保するために最低限必要な内容が盛り込まれており、ドローンの運航者はこのマニュアルの遵守が必須です。

本記事では、飛行マニュアル&航空局標準マニュアルとはどういうものか?という点から、必ずチェックしておくべきポイントについて解説します。

「航空局標準マニュアル」の使用は必須?

「航空局標準マニュアル」の必要性について

航空局標準マニュアルの使用は必須ではありません。

しかし、使用することで申請者が独自に飛行マニュアルを作成する必要がなくなり、マニュアルの審査も発生しないため許可承認が降りるまでの時短に繋がる可能性が高いです。

一方で、航空局標準マニュアルを使用する際は使用するマニュアルに沿った運用を行う必要があるため、記載内容と異なる運用を行うには申請者が独自マニュアルを作成しなければなりません。そのため、標準的な運用を行う場合は航空局標準マニュアルを活用し、特殊な運用が必要な場合は独自マニュアルを作成するのが一般的です。

特に包括申請を行う場合、航空局標準マニュアル02を使用するのがスタンダードな申請方法だと言えるでしょう。

航空局標準マニュアルの種類

現在、航空局標準マニュアルには以下の6種類があります。空撮や点検など、一般的な範囲で使用する場合は標準マニュアル01/02のどちらかを使用することがほとんどです。

  1. 標準マニュアル01:飛行場所を特定した申請(個別申請)で利用可能
  2. 標準マニュアル02:飛行場所を特定しない申請(包括申請)のうち、人口集中地区上空の飛行、夜間飛行、目視外飛行、人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行、危険物輸送又は物件投下を行う飛行で利用可能
  3. 標準マニュアル(空中散布):農用地等での空中散布を目的とした飛行で利用可能
  4. 標準マニュアル(研究開発):無人航空機の機体及び操縦装置の研究開発のための試験飛行で利用可能
  5. 標準マニュアル01(インフラ点検):場所を特定したインフラ・プラント点検飛行で利用可能
  6. 標準マニュアル02(インフラ点検):場所を特定しないインフラ・プラント点検飛行で利用可能

航空局標準マニュアルを守らなかった場合の罰則は?

航空局標準マニュアルに限らず、独自マニュアルであっても、提出した飛行マニュアルを守らず違反した場合は航空法違反となるため罰則の対象となります。

飛行マニュアルとは「安全な飛行のために遵守すべき事項」を取りまとめたものです。

交付される許可承認書の条件の項目には「飛行マニュアルを遵守して飛行させること」と記載されているため、飛行マニュアルに従わないフライトは航空法違反です。

航空局標準マニュアル01/02とは

航空局標準マニュアル01と02は、無人航空機(ドローン)の飛行に関するガイドラインとして提供されているものですが、それぞれの適用範囲や使用条件には明確な違いがあります。

そのため、添付した飛行マニュアルが航空局標準マニュアルである場合はもちろん、独自したマニュアルを添付している場合でも、飛行マニュアルに従わず飛行した場合は航空法第157条の9に違反することになるため、50万円以下の罰金が科されます。

航空局標準マニュアル01/02の主な違い

航空局標準マニュアル01は、飛行場所を特定した申請(個別申請)で利用可能なマニュアルです。

このマニュアルは、特定の場所や日時を指定して飛行を行う場合に使用されます。例えば、空港周辺や地表から150m以上の高さの空域、人や家屋の密集している地域の上空での飛行など、特定の条件下での飛行が対象です。趣味や研究開発目的での飛行も含まれます。

一方、航空局標準マニュアル02は、飛行場所を特定しない申請(包括申請)のうち、特定の条件下での飛行に利用されるマニュアルです。

人口集中地区上空の飛行、夜間飛行、目視外飛行、人や物件から30m以上の距離を確保できない飛行、危険物輸送や物件投下を行う飛行などが対象です。包括申請を行う際に標準的に使用されるマニュアルであり、広範囲での飛行を行う場合に適しています。

「航空局標準マニュアル01/02」の大まかな違いの比較

大まかに違いを比較すると、以下のようになります。イメージしにくいという方は、最低限以下を覚えておくようにしましょう。

  • 申請方法: 航空局標準マニュアル01は個別申請向け、02は包括申請向け。
  • 飛行場所の特定: 01は特定の場所と日時を指定、02は場所を特定しない。
  • 併用不可: 申請の際、標準マニュアルを使用している場合、もう一方のマニュアルと併用した申請は行えません。
  • 安全確保の体制: それぞれのマニュアルで「安全を確保するために必要な体制」として記載されている項目が異なるため、内容をきちんと読み込むことが重要です。

なお、場所や日時を特定した飛行を実施する場合は、航空局標準マニュアル01かそれに準ずる独自マニュアルを使用しなければなりません。

包括申請を含む各飛行方法の承認等を既に取得していた場合でも、個別に申請手続きが必要です。これらの違いを理解し、適切なマニュアルを使用することが、安全なドローン飛行のために重要です。

場所、または場所及び日時を特定した飛行に該当する飛行内容

場所、または場所及び日時を特定した飛行に該当する飛行内容

航空局標準マニュアル01を使用すべき、場所、または場所及び日時を特定した飛行は以下のような飛行内容が該当します。

  • 空港等周辺における飛行
  • 地表または水面から150m以上の高さの空域における飛行
  • 人又は家屋の密集している地域の上空における夜間飛行
  • 夜間における目視外飛行
  • 補助者を配置しない目視外飛行
  • 趣味目的での飛行
  • 研究開発目的での飛行

また、下記該当する場合は場所に加えて「日時」も特定する必要があります。

  • 人又は家屋の密集している地域の上空で夜間における目視外飛行
  • 催し場所の上空における飛行

航空局標準マニュアル01/02で共通で定められていること

航空局標準マニュアル01/02で共通で定められていること

以下で紹介している内容は、航空局標準マニュアル01/02それぞれに共通で定められている遵守事項です。

独自マニュアルを製作する際にも基本的には以下の項目を記載し遵守することが多いため、いずれのマニュアルを使用する予定でも、必ずチェックしておきましょう。

  • 飛行前の点検を実施すること。
  • 飛行後の点検を実施すること。
  • 20時間の飛行毎に、飛行マニュアルに記載された項目について無人航空機の点検を実施すること。
  • 離着陸、ホバリング、左右方向の移動、前後方向の移動、水平面内での飛行など、これらの操作が容易にできるようになるまで10時間以上の操縦練習を実行すること。
  • 基礎的な操縦技量を習得した上で、対面飛行、飛行の組合、8の字飛行が可能になるよう操縦練習を実施すること。

そのほかにも、さまざまな項目がありますので、以下の国土交通省が提示している「航空局標準マニュアル01/02」も併せてご参照ください。

国土交通省:航空局標準マニュアル01

国土交通省:航空局標準マニュアル02

航空局標準マニュアル02で定められている「安全を確保するために必要な体制」

基本的に多くの方が使用する航空局標準マニュアルは、どちらかというと包括申請で使用する02であることが多いです。

そのため、以下では航空局標準マニュアル02で定められている飛行中に守るべき「安全を確保するために必要な体制」について解説します。

「安全を確保するために必要な体制」はこの飛行マニュアルを使用する際、すべての飛行において共通して操縦者等が必ず守るべき点が記載されているため、きちんと内容を押さえておきましょう。

航空局標準マニュアル02で特に抑えておきたい運航体制①第三者上空・立入管理

まず、航空局標準マニュアル02を使用する上で特に抑えておきたいのは以下の4つです。

  • 場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。
  • 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。なお、塀やフェンス等を設置することや、第三者の立入りを制限する旨の看板やコーン等を飛行範囲や周辺環境に応じて設置することにより立入管理区画を明示。第三者の立入りを確実に制限することができる場合は、これを補助者の配置に代えることができる。
  • 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
  • 補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。

ドローンマニュアルに関する補助者の役割

 

マニュアルの時点で「 場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。」と記載されているため、ドローンの飛行経路直下及びその周辺に第三者が立ち入らないようにしなければいけません。

第三者が立ち入らないようにするための措置としては、補助者による注意喚起や操縦者への助言などがあります。実際の飛行では第三者の立入管理や操縦者への指示、気象状況の変化などを1人の補助者が行うことは困難です。そのため、実施する飛行の規模感に合わせて、必要な補助者の人数をあらかじめ考えておきましょう。

なお、補助者を立てない場合については、堀やフェンス、第三者が立ち入らないようにコーンや看板等で立入を制限しなければいけません。

航空局標準マニュアル02で特に抑えておきたい運航体制②飛行条件

航空局標準マニュアル02に限った話ではありませんが、飛行マニュアルには各飛行を実施する上での条件が定められています。実際に航空局標準マニュアル02で記載されている、必ず覚えておきたい飛行条件は以下のような点です。

  • 風速5m/s以上の状態では飛行させない。
  • 第三者の往来が多い場所や学校、病院、神社仏閣、観光施設などの不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。
    • ただし、当該施設から飛行の依頼があった場合は、休校日、休診日、早朝など第三者が往来する可能性が低い時間帯とし、飛行経路を当該施設内に限定した上で、一定の広さのある場所を飛行させるものとする。
    • また、経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止する。また、突風などを考慮して当該場所の付近(近隣)の第三者や物件への影響を予め現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。

航空局標準マニュアル02で特に抑えておきたい運航体制②飛行条件

 

  • 人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所を可能な限り選定するとともに、周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する。
  • 人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。
    • ただし、業務上、やむを得ず飛行が必要な場合は、常時操縦者と連絡を取り合うことができる補助者の配置を必須とし、飛行範囲を限定して不必要な飛行をさせないようにする。さらに、一定の広さのある場所を飛行させるとともに、経路下における第三者の立ち入りについて制限を行い、第三者の立ち入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止する。
    • また、突風などを考慮して当該場所の付近(近隣)の第三者や物件への影響を予め現地で確認・評価し、補助者の増員等を行う。
  • 飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させる装備できない場合は、第三者が飛行経路下に入らないように監視及び注意喚起をする補助者を必ず配置。万が一第三者が飛行経路下に接近又は進入した場合は、操縦者に適切に助言を行い飛行を中止する等適切な安全措置をとる。飛行範囲への第三者の立入管理措置を行う場合には、補助者の配置に代えることができる。
  • 夜間飛行においては目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する。
    • 飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施すること。
    • 夜間の離発着場所において車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な照明を確保する。

これらは航空局標準マニュアル02から抜粋した一部です。航空局標準マニュアル02を使用して飛行する際は、マニュアルに安全を確保するために必要な体制として記載されている項目をすべて守った上で飛行しなければいけません。

しかし実際の飛行や業務の内容によっては、守ると実施したい飛行が実現できないこともあります。そんな時には、独自マニュアルを作成しましょう。

ドローンを業務利用するなら知っておきたい「独自マニュアル」

ドローンを業務利用するなら知っておきたい「独自マニュアル」

独自マニュアルとは、その名前の通り航空局標準マニュアルを使用せず、独自に定めた内容が記載されている飛行マニュアルです。

ただし、独自マニュアルだからと言って好き勝手に記載して良い訳ではありません。飽くまで航空局標準マニュアルに準ずる飛行マニュアルとして活用できるような内容を記載する必要があります。

航空局標準マニュアル02の規制を独自マニュアルで緩和する場合

例えば、航空局標準マニュアルには「風速5m/s以上の状態では飛行させない。」という記載があります。

しかし、風速が5m/s以上にならないかは、飛行当日にならないと分かりません。そして、業務で飛行する場合はその日に飛行しなければいけない場合も多いです。

そのような場合は、例えば独自マニュアルに以下のような記載をします。

  • 風速5m/s以上の状態では飛行させない。
    • ただし、業務上必要不可欠な飛行と判断した場合は、風速5m/s以上であっても飛行を行う。
    • 飛行を行う条件として、機体メーカーが定めた風速抵抗値の範囲内とする。

ただし、これは飽くまでも一例のため、実際の飛行許可承認申請時には修正指示が発生することも少なくありません。

独自マニュアルを使用する際は、申請時に国土交通省が申請内容に加えて、作成したマニュアルの詳細部分までチェックした上で問題無ければ許可承認が降ります。申請時の航空法や航空局標準マニュアルの内容によって、独自マニュアルに記載すべき内容は異なるため、申請時点の航空局標準マニュアルと航空法を確認した上で独自マニュアルを作成しましょう。

飛行マニュアルの内容をきちんと抑えて法令違反に該当しない飛行をしよう

飛行マニュアルを遵守して空撮するドローン

航空局標準マニュアルは非常に細かく守るべき点が記載されているため、覚えきれないと思う方もいるでしょう。

重要なのは、航空法に違反しない飛行を行うということです。

飛行マニュアルに記載されている遵守事項は、すべてドローンを飛行させる上で航空法にて定められていることしか記載されていません。

実際に自分が行う予定の飛行はどのような場所でどんな内容で実施するのかを細かくイメージした上で、実際自分が行う飛行と照らし合わせながら使用する飛行マニュアルを熟読し、無意識に法令違反をしないで済むように努めましょう。

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この記事を書いた人

1等無人航空機操縦士資格保有

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