ドローンの災害活用事例とは?メリットから今後の課題まで詳しく解説

公開:2024.06.03  更新日:2024.06.13

事例

災害にドローンを活用する現場

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ドローン災害時に物資輸送消火などにも活用できると聞くけれど「具体的にどのようなことができるのか」あまりイメージがわかず困っている人はいませんか?

今回はドローン災害活用事例からわかる、活用のメリットから今後の課題まで詳しく解説します。

ドローンの災害活用とは?

災害で活躍するドローン

総務省消防庁では消防・防災分野で災害対応ドローンの活用をさらに推進するため、「消防防災分野におけるドローン活用の手引き<第2版>」をホームページに掲載し、関係法令や維持管理体制、消防防災分野における活用事例の紹介を行っています。

「消防防災分野のドローン活用の手引き」における、消防防災分野で導入されるドローン活用の用途は次の通りです。

項目概要
火災対応火災が発生した際に火災の拡大状況の確認や部隊の活動状況の確認に用いる
救助捜索活動山間部や沿岸部で遭難事故が発生した時の捜索に用いる
情報収集早期の被害情報確認と活動エリア周辺の状況観察をして部隊の安全管理にも活用する
広域災害対応大規模災害が起こった時に広域の被害状況を確認し他の機関との情報共有、活動内容の調整などに活用する

また、2021年6月1日現在の災害現場におけるドローンの累計活用件数は以下の通りです。

項目件数
火災(建物・山林など)702件
火災原因調査1,896件
自然災害(風水害、地震)200件
救助・捜索(山岳・水難事故)861件
その他392件
合計4,051件

今後防災対応に適したドローン技術、法整備、理解が進むことで、ドローンの災害活用の用途が今以上に広がり導入実績の件数はより増加するでしょう。

参考:総務省消防庁「令和4年通知・通達『消防本部における災害対応ドローンの更なる活用推進について』」

ドローンの災害活用事例

ドローンの災害活用事例

ドローン防災に活用した事例と災害時活用した事例を、活用したメリットと今後の課題を含めてそれぞれご紹介します。

ドローンの防災活用事例

ドローン防災に活用した事例を3つご紹介します。

気象庁における噴火警報の的確な発表のための火口周辺調査

気象庁における噴火警報の的確な発表のための火口周辺調査をするドローン

気象庁では火山の噴火の前兆を見つけて噴火警報などを適切に発表するために、地震計、傾斜計、空振計、GNSS観測装置、監視カメラなどの火山観測施設を整備し、大学や防災機関などからのデータ提供も受けて24時間観測・監視しています。

一方定期的、または火山活動が活発化した場合は臨時で火口周辺の状況を確認して評価を行う必要がありますが、噴火のおそれがある場合は作業員が火口に近づくのは危険です。

このことから気象庁では、2019年よりドローンを用いた火口周辺調査を行うこととしました。

調査の概要は次の通りです。

項目概要
事例の概要
  • 可視カメラと赤外カメラを搭載したドローンを用いて火山の火口周辺の状況を詳細に把握する
  • ドローンを用いた空中熱赤外観測を年に1~2回実施する
  • ドローン活用のメリット
  • 人間が危険な場所には立ち入らずに火山の様子を観察できる
  • 調査実績
  • 2019年度 草津白根山、口永良部島、霧島山、阿蘇山
  • 2020年度 草津白根山、口永良部島、霧島山、阿蘇山
  • 2021年度 浅間山、薩摩硫黄島、口永良部島、阿蘇山
  • 2022年度 十勝岳、吾妻山、箱根山、中之島
  • 今後の課題
  • 高い高度で飛行できるようになること
  • 強風の中でも飛行できるようになること
  • 撮影画像内の各点の実際の赤外計測値をデータとして取り出せるドローン搭載用の熱赤外カメラを開発すること
  • 世界有数の火山国である日本では防災のための火山観測は欠かすことができないため、危険な区域に人間が立ち入らずに火口の観測ができるドローンの活用は、今後も少しずつ進められていくと考えられるでしょう。

    地震を想定した訓練

    地震を想定した訓練に活用されるドローン

    2022年に高松市消防局では緊急消防援助隊香川県大隊の連携活動の強化を目的として、地震を想定した訓練を行いました。

    防災訓練の概要は以下の通りです。

    項目概要
    事例の概要
  • 情報収集活動用のドローンを飛行させて被害状況と行方不明者を把握する
  • 大型モニターを現場指揮本部に設置して撮影した画像の共有を行う
  • ドローン活用のメリット
  • 部隊がアクセス困難な要救助者を早期発見できる
  • 建物の屋上における救出活動に必要な情報を収集し迅速な救助活動につながる
  • 今後の課題
  • 人員が少ない場合でも指揮本部との連携がうまく取れるようになること
  • ドローン小隊間の情報共有手段を確立すること
  • 通信を安定化させること
  • 地震を想定した防災訓練をすることで、ドローン災害時活用することへの課題が明確化した好事例と言えるでしょう。

    遭難者の夜間捜索の訓練

    遭難者の夜間捜索の訓練に利用されているドローン

    2022年にとかち広域消防局上士幌消防署、上士幌消防団、消防庁、JICは厳冬期における遭難者の捜索活動へのドローン活用の可能性と有効性を確認するのを目的として、糠平湖でドローンを用いた捜索訓練を行いました。

    捜索訓練の概要は次の通りです。

    項目概要
    事例の概要
  • 事前の検証結果から高度100m、飛行速度7m/sで捜索エリアにドローンを自動飛行させて捜索を行う
  • ドローン活用のメリット
  • 赤外線カメラと撮影映像の解析ソフトを組み合わせて使うことで効率的に遭難者を発見できる
  • ドローンに搭載した照明で発見した遭難者の状態を可視カメラで確認し暗闇の中にいる救助隊を救出ルートへ誘導できる
  • 気温が低い中早急に遭難した人を救助しなければならない場合、発見するのをドローン、救助するのは専門の救助隊と分業することで効率良く救出活動ができるとわかった好事例だと言えるでしょう。

    ドローンの災害時活用事例

    ドローン災害時活用した事例を5つご紹介します。

    奈良県広域消防組合消防本部が山岳での救助者捜索にドローンを活用した事例

    奈良県広域消防組合消防本部が山岳での救助者捜索にドローンを活用した事例

    奈良県広域消防組合消防本部では、山岳での救助者捜索を目的としてドローンを活用しました。

    捜索活動の概要は以下の通りです。

    項目概要
    事例の概要
  • 県警のヘリコプター、県の防災ヘリコプターと飛行エリアと飛行時間を調整して活動
  • ドローンの光学カメラ映像から小さな滝つぼに浮いている要救助者を発見した
  • ドローン活用のメリット
  • 地上からでは捜索をしにくい場所に重点を置いて上空から捜索できる
  • 水のある場所の水深が深くても水の透明度が高ければある程度は確認できる
  • 今後の課題
  • たまたま天候に恵まれたのでドローンを飛行させられたが天気の良くない日にどうするのかを検討すること
  • 立木などがあるとドローンでは捜索がしにくいこと
  • ドローンの光学カメラ映像が人命救助につながり、天候や山岳の環境などドローンを飛行させる上での課題もわかった好事例と言えるでしょう。

    釧路北部消防事務組合消防本部が林野火災の情報収集にドローンを活用した事例

    釧路北部消防事務組合消防本部が林野火災の情報収集にドローンを活用した事例

    釧路北部消防事務組合消防本部では、林野火災が起こった際に延焼した場所の確認をドローンを用いて行いました。

    空撮による情報収集の概要は次の通りです。

    項目概要
    事例の概要
  • 塘路湖周辺の入林可能な林道から延焼した場所への距離が遠く確認が難しい状況
  • 煙は目視できても出火箇所の特定ができない状況
  • ドローン活用のメリット
  • 湖の対岸からドローンを飛行させ出火箇所が特定できた
  • 今後の課題
  • 山間ではGPSがロストしやすいので注意が必要なこと
  • ドローンが空撮した画像から、林野火災の出火箇所や延焼箇所を早急に確認することができた災害調査の好事例だと言えるでしょう。

    岩見沢地区消防事務組合が畑地火災の原因調査に活用した事例

    岩見沢地区消防事務組合が畑地火災の原因調査に活用した事例

    岩見沢地区消防事務組合では、畑地で発生した火災の原因調査をドローンを用いて行いました。

    空撮による火災の災害調査の概要は以下の通りです。

    項目概要
    事例の概要
  • 畑地で発生した火災でどのくらいの面積が焼損したのかをドローンを用いて上空から空撮することで確認
  • 従来は徒歩とメジャーで焼損面積を計測
  • ドローン活用のメリット
  • 従来の方法と比較して迅速に焼損面積を計測できた
  • 今後の課題
  • 火災発生日に撮影をした場合煙や炎の影響が出る
  • 従来の災害調査方法と比較して、早く安全に焼損面積を計測できた好事例と言えるでしょう。

    浜松市消防局が静岡県熱海市の土石流災害で広域災害対応に活用した事例

    浜松市消防局が静岡県熱海市の土石流災害で広域災害対応に活用した事例

    浜松市消防局では2021年に発生した静岡県熱海市における土石流災害で、広域災害対応のためドローンを活用しました。

    ドローンによる広域災害対応の概要は次の通りです。

     

    項目概要
    事例の概要
  • 災害が発生した2021年7月3日の翌日よりドローン空撮による情報収集を開始
  • ドローンによる被災状況の把握、活動エリアの確認、安全確認、赤外線カメラによる捜索活動、住宅地図と撮影映像の比較、総務省消防庁などへの映像伝送を行う
  • ドローン活用のメリット
  • 災害の全体像が早急に把握できた
  • 総務省消防庁、静岡県、派遣消防本部と情報共有ができた
  • 活動方針を決定する上で収集した情報が参考になった
  • 活動記録を残せた
  • 今後の課題
  • 複数の機関が同時にドローンを用いて活動する際は事前の航空運用調整が必要
  • 大きな災害が起こった際に、他の自治体への支援活動をする際にもドローンが有効だとわかった好事例だと言えるでしょう。

    国立研究開発法人土木研究所が地すべり災害における技術支援をした事例

    国立研究開発法人土木研究所が地すべり災害における技術支援をした事例

    国立研究開発法人土木研究所では、災害時対応やその技術指導、訓練など複数の分野でドローンを活用しています。

    ドローンの活用事例は以下の通りです。

    項目概要
    事例の概要
  • 地すべり災害が起こった直後にその様子をドローンで撮影しておき、「バーチャル現場」として保存することで訓練や点検に活用
  • 自治体の橋梁点検でドローンを用いて損傷の把握や記録を支援
  • 橋梁や堰などをドローンに搭載したグリーンレーザーを用いて高精度な点検を行い保全に役立てる
  • ドローン活用のメリット
  • 災害対応が迅速化する
  • 構造物の予防保全対策ができる
  • 今後の課題
  • GPSが入りにくい橋の下などでも安全に飛行できるドローンの開発
  • 防災のため橋や堰などの大型構造物を高精度で点検して安全を維持し、災害時にも早急な対応に役立てられた好事例と言えるでしょう。

    参考:総務省消防庁「令和4年通知・通達『消防本部における災害対応ドローンの更なる活用推進について』」

    参考:国土交通省 技術政策「行政ニーズに対応した汎用性の高いドローンの利活用等に関する技術検討会」

    災害時のドローン規制

    災害時のドローン規制

    ドローンは通常時であれば航空法や小型無人機等飛行禁止法の規制を受けますが、災害時にもこの規制は適用されるのでしょうか。

    航空法の第132条の92には、ドローンについて「捜索・救助等のための特例」が定められています。

    具体的には第132条の85に定める飛行禁止空域、第132条の86に定める飛行の方法(第1項のアルコールや薬物の影響を除く)第132条の87~89(第三者が立ち入った場合の措置、飛行計画、飛行日誌)の規定は事故があった時、捜索、緊急性があって国土交通省令で定める目的のために行う飛行については適用しないという内容です。

    しかし「消防防災分野におけるドローン活用の手引き<第2版>」では、消防活動としてドローンを飛行させる際には想定される飛行範囲で、「事故・災害」目的での許可・承認を得ることが望ましいとしています。

    また、「捜索・救助等のための特例」が適用される場合の運用ガイドラインによると、飛行の安全確保の方法として次のことが定められています。

    項目概要
    航空情報の発行手続き
  • 空港などの周辺、緊急用務空域、地上や水上から 150m 以上の高さでドローンを飛行させる場合は空港事務所に架電した上で以下の情報をメールまたはFAXで通知する。

    1.飛行目的
    2.飛行範囲
    3.最大飛行高度
    4.飛行日時
    5.機体数
    6.機体諸元(ドローンの種類、重量、寸法、色など)
    7.飛行の主体者の連絡先
    8.飛行の依頼元(依頼に基づく場合)
  • 航空機の航行の安全確保
  • ドローンの飛行空域で航空機の飛行を確認したら航空機の安全をさまたげないように飛行させること
  • 大規模災害時の飛行調整
  • 現地災害対策本部などを通じてドローンの飛行の方法(日時、飛行場所など)を調整することが望ましい
  • 災害時であってもやみくもにドローンを飛行させるのではなく、一定のルールの下に安全を確保しながら飛行させなければならないことを覚えておきましょう。

    参考:e-GOV法令検索「航空法」

    参考:総務省消防庁「令和4年通知・通達『消防本部における災害対応ドローンの更なる活用推進について』」

    ドローンによる災害協力を検討するためには

    ドローンによる災害協力を検討するためには

    ドローンを、実際の防災があった場合に活用して協力したい場合、ドローン協会やドローンスクール、ドローン活用企業との関わりを確保することが重要です。

    一般社団法人岩手県ドローン協会では、

    平成30年5月にドローンを活用した災害時の協力協定を締結しています。他にもドローンを活用した一般企業(本社:東京都品川区)と千葉県九十九里町との間で「災害時における無人航空機による活動協力に関する協定」が締結されました。

    慢性的な人手不足を補う狙いから、内閣官房や経済産業省では「スマート保安導入支援事業」、「ドローン情報共有プラットフォーム」等で補助金支援情報も掲載されています。

    ドローンを活用した災害要請に協力したいと検討されている方は、ぜひ以下の情報もご参照ください。

    参考:次世代空モビリティ (METI/経済産業省)

    参考:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/h31_minkan/pdf/013.pdf

    まとめ

    ドローンの防災・災害時活用事例はまだ数が多くはないものの、これから機体の開発が進み用途や機能が拡充されればさらに事例が増えることが予想されます。

    この記事も参考にして、安全を確保しながら防災・災害時にどのようにドローンを使えるのかを考え、新たな活用方法を生み出してみてください。

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    この記事を書いた人

    1等無人航空機操縦士資格保有

    ドローンの可能性を広げるため、有益な情報の発信や飛行に関する情報をお届けします。人手不足の解決や、実現不可能だったことを実現していく可能性を秘めたドローンを様々な方へ理解いただき、有用性を実感できるようなメディアにします。

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