ドローン物流とは?メリットから未来に向けた課題まで詳しく解説

公開:2024.06.13 

飛行

事例

ドローンで物流の運搬業務を行う風景

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自社のサービスの品質をもっとよくするためには物流の課題を解決しなければならない中で、ドローン物流があると知ったが、詳細がわからないので自社でも活用できるか判断しかねている方はいませんか?

この記事では、ドローン物流メリットから未来に向けた課題まで詳しく解説します。

ドローン物流とは?

物流に利用するドローン

ドローン物流とは荷物の輸送や配達ドローンを活用することです。

2024年5月現在、物流の分野でドローンを活用する上で以下の2つのガイドラインが定められています。

ガイドラインの種類目的対象者内容掲載ページ
ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0ドローン物流サービスにおける課題の解決策や持続可能な事業形態を整理するレベル3(無人地帯での目視外飛行)飛行とレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)でドローン物流事業を計画する人ドローン物流の事業を行うにあたり、適切な事業運営をするために必要な事項を記載した「第1部 社会実装編」と、関係法令の適用を記載した「第2部 法令編」がある国土交通省「物流分野におけるドローンの活用」
ドローンによる医薬品配送に関するガイドライ

1.医薬品販売業者または薬局が医薬品販売業者、薬局、医療機関に対しドローンを用いて医薬品を配送する場合

2.薬局または医療機関が薬剤を患者に対しドローンで配送する場合

3.2.を行う時に留意する事項を定める

・医薬品販売業者

・薬局

・医療機関

ドローン活用時の留意事項、服薬指導の実施についての留意事項など厚生労働省「医薬品の販売制度」

どちらのガイドラインにもドローン物流を行う上で知っておかなければならない法律上の規制から、事業計画の立て方まで詳しく記載してあるので、ドローン物流を事業として行いたい人は必ず目を通しておきましょう。

参考:国土交通省「物流分野におけるドローンの活用」

参考:厚生労働省「医薬品の販売制度」

ドローン物流の現状

物流で活動中のドローン

ドローン物流は現状どのような形で推進されているのでしょうか。

3つの観点からご紹介します。

市場規模

2023年4月7日に競争制作研究センターでは、「2023年度、日本国内におけるドローンビジネスの現状と今後の展望」というテーマで、ドローン・ジャパン株式会社CEO取締役会長春原久徳氏による講演会が行われました。

講演会では国内におけるドローンビジネスの市場規模が、以下のように成長していることが発表されました。

2022年度2028年度(見込み)
サービス市場1,587億円(前年比38.4%増) 5,615億円(2022年度~2028年度の年間平均成長率23.4%増)
機体市場848億円(前年比22.4%) 2,188億円(2022年度~2028年度の年間平均成長率17.1%増)
周辺サービス市場652億円(前年比39.3%)1,538億円(2022年度~2028年度の年間平均成長率15.3%増)

サービス、機体、周辺サービス全てが前年度比20%を超えて大きく成長しており、2028年度の見込みでは少し成長率の伸びはおだやかになるものの、年間平均成長率はいずれも15%以上と予想されています。

日本においては、ドローンビジネスへの期待の高まりを裏付ける結果となりました。

一方、国内ドローンビジネスのサービス別市場規模において、「物流」分野は以下のように成長しているのがわかりました。

年度2017年度2020年度2023年度2025年度2027年度2028年度
物流0億円15億円37億円137億円542億円863億円

2017年度には0円だった市場が、10年で863億円規模にまで成長すると予想されています。

短期間でドローン物流の事業にはたくさんの企業が新規参入し、競争を繰り広げていくと考えられるでしょう。

参考:競争制作研究センター「BBL」

過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会

国土交通省においては、2019年から「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会」を開催し、ビジネスモデル作りやビジネスの初期段階における事業展開の後押しをするための支援方法の具体化について検討をしています。

具体的には物流分野における人手不足の現状を鑑みて、どのような活用方法が望ましいかを検討したり、企業を巻き込んで実証実験を行ったりしているのです。

ドローン物流への活用例としては、以下のようなものがあるとされました。

  1. 離島や過疎地等の非人口密集地域における貨物配送 
  2. 都市部における貨物配送
  3. 災害発生時の活用 
  4. 倉庫内貨物配送

現状の物流において人が荷物を配送しにくいエリアや、災害が発生して配送をすると危険が及ぶ場合などにドローンの使用が考えられているとわかります。

また2023年3月には実証実験の結果を整理し、ドローン物流の利活用に関するオンラインセミナーを開催して、今まで検討した成果を広く公表しました。

これらのことからドローン物流は官民双方が協力しあって、より良い活用方法を検討し続けているのが現状だと言えるでしょう。

参考:国土交通省「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会」

ドローン情報共有プラットフォーム

物流に限った話ではありませんが、ドローンの活用はまだ推進段階にあるため、内閣官房のホームページではドローンに関する国の関連施策や地方自治体の取り組みを「ドローン情報共有プラットフォーム」というページにまとめています。

具体的には次のような情報が掲載されています。

項目詳細
ワンストップ窓口

・地域ごと

・分野ごと

国の関連施策

・主な関係法令

・ガイドライン

・手引き

・交付金

・補助金

・その他支援

・マッチング

・技術開発

・関連会議

・その他

自治体の関連施策

福島県

東京都

神奈川県

富山県

愛知県

三重県

兵庫県

大分県

愛知県豊川市/新庄市

関連団体

一般社団法人ドローンサービス推進協議会(DSPA)

一般社団法人日本産業用無人航空機工業会(JUAV)

一般社団法人日本ドローンコンソーシアム(JDC)

一般社団法人日本無人機運航管理コンソーシアム (JUTM)

一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)

福島ロボットテストフィールド

関連イベントドローンサミット

現状の関係法令から最新情報まで収集できるため、ドローン物流を事業として行いたい人は目を通しておきましょう。

参考:内閣官房「ドローン情報共有プラットフォーム」

ドローン物流のメリット

ドローン物流のメリット

ドローン物流活用するメリットには次のようなことが挙げられます。

  • 配送コストを抑えられる
  • 人手不足の解消につながる
  • 高所、離島、過疎地など人が配送しにくい場所にも配送できる
  • 被災地にも安全に配送できる
  • 交通渋滞を緩和できる
  • 配達スピードを上げられる
  • 配達員と顧客間でのトラブルを防げる
  • CO2排出量が削減できる

ドローン物流への活用は、人手不足や働き方改革による物流の停滞が懸念されている「物流の2024年問題」の解決策の1つにもなりうるでしょう。

また配達員の安全や環境へも配慮しながら、配達スピードを上げコストが抑えられるのも大きなメリットだと言えます。

ドローン物流のデメリット

ドローンのデメリット

ドローン物流に活用するデメリットは以下の通りです。

  • 天気が良くない日に配達するのが難しい
  • 顧客の本人確認が難しい
  • ドローンや荷物が盗まれるといったトラブルが発生するかもしれない
  • 配送時にバッテリー切れを起こさないようにしなければならない
  • 運べる重量に限界がある
  • ドローンが墜落するといった事故の可能性がある

ドローンの機能が向上すれば解決できることは今後の技術開発に期待すればよいのですが、盗難予防や天気の問題に関しては今後も議論が必要だと言えるでしょう。

ドローン物流の事例

物流中のドローン

現状行われているドローン物流事例を4つご紹介します。

農産物輸送と買い物支援輸送

2023年12月26日に行われた過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会の第11回検討会において、名古屋鉄道株式会社は愛知県幸田町で行ったドローンと自動運転車連携による農産物・買い物支援輸送の実証実験について発表を行いました。

愛知県幸田町は人口が4.2万人で高齢化率は21.3%ですが、工業団地が多い一方で山間部では人口減少や高齢化の影響で通勤・通学や買い物の利便性に課題を抱えていたのです。

また町の農業は担い手不足や販売量の減少といった課題がありました。

そこでドローンと自動運転車を連携して農産物輸送と買い物支援輸送をする実証実験を行った所、それぞれの長所を生かし合い、輸送をトータルで無人化する将来像を描けただけではなく、住民や関係者にドローン物流への理解を深めてもらうことができたのです。

今後は技術面、法規制、運用面での課題を整理し実装に向けて取り組むこととしています。

今後の高齢化による地域の課題を解決するのにドローン物流が役立つきっかけを作った好事例だと言えるでしょう。

参考:国土交通省「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル研究会」

ドローンによる医薬品卸から医療機関への医薬品配送

東京都では都内における「ドローン物流サービスの社会実装を目指すプロジェクト」を公募し、2件を選定しました。うちの1件に選ばれたのが「ドローンによる医薬品卸から医療機関への医薬品配送」です。

このプロジェクトでは2023年2月1日からKDDI株式会社、KDDIスマートドローン株式会社、日本航空株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ウェザーニューズ、株式会社メディセオがドローンを活用した医療物資輸送を行う実証実験を行いました。

ビジネスモデルの構築や医薬品の品質影響の確認などを目的として2021年度、2022年度も実験を行ってきましたが、今回は次の2つをテーマに実証実験をしたのです。

  • 有人地帯の目視外飛行(レベル4)による医薬品定期配送
  • ドローンポート導入による安全性や運航業務の省人化の検証

具体的には2023年12月14日〜12月20日に東京都西多摩郡檜原村にある「檜原診療所」から「特別養護老人ホーム 桧原サナホーム」まで、ドローンが約4.8kmを往復して毎日定時に処方薬を配送しました。

この実験でドローンは飛行距離を約30%、飛行時間を約24%短縮でき、定時に飛行をして医薬品を配送するということの実現性をさらに高めるのに成功したのです。

医療の地域格差を埋めるのにドローンが一役買う可能性を示した好事例だと言えるでしょう。

参考:MyTOKYO「都内におけるドローン物流サービスの社会実装を目指すプロジェクトを選定しました」

参考:KDDI「日本初「医薬品輸送におけるドローンのレベル4飛行」~医薬品輸送における課題解決に挑む~」

能登半島地震 ドローンによる緊急物資輸送対応

2024年3月13日に行われた過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会の第12回検討会において、株式会社NEXT DELIVERYは能登半島地震におけるドローンによる緊急物資輸送の対応報告を行いました。

具体的には、2024年1月7日より輪島市からの要請を受けた一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の活動に参加し、輪島市内でドローンによる医療物資などの輸送を実施したのです。

孤立集落の避難所まで徒歩では5~6時間かかるのを10分程度で輸送することができ、物資輸送にかかる時間を大幅に削減するのに成功しました。

ドローン物流を日頃から活用しておくことで、災害時にも役立つ可能性を示した好事例だと言えるでしょう。

参考:国土交通省「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル研究会」

 

海外におけるドローン物流の活用事例

2023年10月にAmazonは物流関係の説明会を開催し、アメリカで実験的に行ってきたドローン配送をイギリスとイタリアでも行うと発表しました。

Amazonは2022年からAmazonPrimeの会員に対し、重さ約2.2k以内の日用品などを追加料金なしで配送するというサービス「Prime Air」を行ってきましたが、このサービスを拡大します。

現状は「Prime Air」専用のデリバリーセンターからドローン配送をしていますが、今後は既存の物流拠点である「フルフィルメントセンター」からの空輸をする予定としているのです。

また一部地域ではオンライン薬局サービス「Amazon Pharmacy」での注文もドローン配送を開始しました。

海外でもドローン物流は少しずつ認知が広がり、活用される場が増えてきていると言えるでしょう。

参考:日経クロステック「Amazonのドローン配送が米国外に“離陸”、新型機『MK30』は飛行距離2倍」

ドローン物流における課題

ドローン物流の課題

ドローン物流を今後スムーズに展開していく上で解決しなければならない課題には、次のようなことがあります。

  • 河川上空でのドローン活用のルール制定
  • ドローンを多数運航するための運航システムの実用化
  • ドローンの機体の量産化
  • 重い荷物を運べる機体の開発
  • 配送事故が発生した際の保険をどうするか
  • 騒音対策

国やメーカーに帰属する対応が大半であるため、ドローン関連の法律や機体を利用するユーザー側が対策できる内容は限られている状況です。

どれもすぐには解決できない課題ではありますが、過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会などでも少しずつ議論が進められています。

今後の展望も鑑みながら、徐々にドローンに関する法律や機体等、多角的な情報に触れていく方法も重要だといえるでしょう。

ドローン物流の将来性

ドローン物流の将来性

前の項目でもご紹介した通り、ドローン物流市場規模は急激に拡大しているため将来性は十分にあると考えられます。

ただし実証実験でも行われていたことですが、過疎地域への配送などではドローン物流単体での事業だとコスト面で採算が合わなくなる可能性もあるため、Amazonも行ったように既存の配送手段と組み合わせたサービス展開が重要となるのではないでしょうか。

また2023年12月26日に国土交通省が公表した「ドローンのレベル3.5飛行制度の新設について」という資料によると、無人地帯における目視外飛行の事業化を推進するため、現行のレベル1~レベル4までの飛行レベルに加えてレベル3.5を新設することとなりました。

人手不足問題が深刻な運送業界において、解決策の1つとして「ドローン配送を積極的に導入したい」という事業者の意見が反映されて規制緩和に至った改正案です。

レベル3.5飛行では、デジタル技術、操縦ライセンスの保有、保険への加入の3つを条件として、補助者・看板の配置や一時停止といったこれまでの立入管理措置をなくし、道路や鉄道等の横断が簡単にできる仕組みとなっています。

2023年12月8日には株式会社NEXT DELIVERYがレベル3.5飛行の飛行承認を取得して、12月11日には初飛行を行いドローン配送サービスの事業化に成功しています。

 

一方、災害時の物資供給や薬の配送など、地域になくてはならない公共的な役割もドローン物流が今後担っていく可能性があります。

ドローン技術の進歩とともに用途が少しずつ広がって、新たな物流の体制やビジネスモデルが生まれる可能性を秘めていると言えるでしょう。

現状だと法規制の関係で1企業が対応可能な範囲は限られるため、ドローンビジネス展開も、活用方法も要検討しながらの導入が求められます。

ドローンハブでは、具体的なドローン活用術や「ドローンの導入によるさらなる社会的な成長」などにフォーカスした情報を配信します。

ドローンに関するあらゆる相談も承っておりますので、ドローン事業による拡大・新規参入をご検討の方はお気軽に連絡ください。

参考:国土交通省「ドローンのレベル3.5飛行制度の新設について」

まとめ

ドローン物流とは荷物の輸送や配達ドローンを活用することですが、現状は機体の開発や実証実験を少しずつ進めている段階であり、さまざまな課題の解決が進むにつれ市場規模の拡大が見込めるでしょう。

この記事も参考にしてぜひドローン物流に関する理解を深め、自社の物流の課題解決に役立てててみてください。

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この記事を書いた人

1等無人航空機操縦士資格保有

ドローンの可能性を広げるため、有益な情報の発信や飛行に関する情報をお届けします。人手不足の解決や、実現不可能だったことを実現していく可能性を秘めたドローンを様々な方へ理解いただき、有用性を実感できるようなメディアにします。

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