ドローンを建設業で活用するには?資格から補助金まで詳しく解説

公開:2024.07.26 

ドローン建物点検

ドローンを建設業で活用する方法と資格・補助金に関する内容

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自社で行っている建設業ドローン活用したいと思っているけれど、何から始めて良いかわからず困っている人はいませんか?

この記事では、ドローン建設業活用するために知っておきたい資格から補助金まで詳しく解説します。

ドローンの建設業における活用が推進される背景

ドローンの建設業における活用が推進される背景

ドローン建設業における活用が推進される背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

国土交通行政のDXを推進するため

2023年に国土交通省が発表した「令和5年版国土交通白書」には、国土交通省が国土交通行政のDXを推進し、文化・風土の変革や行政庁としての生産性向上に取り組んでいる内容が示されています。

国土交通省では、「インフラの作り方の変革」「インフラの使い方の変革」「データの活かし方の変革」によるインフラ分野と行政手続のDXが行われています。の3つの変革のうち、「インフラの作り方の変革」にドローン活用されている状況です。

ICT技術などを活かした、インフラ建設現場における生産性向上と魅力ある現場作りへの取り組みをi-Construction(アイ・コンストラクション)と呼びます。

ホームページにはドローンを用いるUAV測量を行い工期短縮や作業時間の短縮の成果を挙げた事例がたくさん紹介されています。国土交通省のDX推進のため、ドローン技術が大いに役立っていると言えるでしょう。

参考:国土交通省「令和5年版国土交通白書」

参考:国土交通省「i-Construction」

2016年10月11日に行われた建設産業政策会議の会議資料「建設産業の現状と課題」で、建設業の中長期的な担い手確保の試算が行われました。

結果、2025年に必要な技能労働者数は333万人~379万人であることが判明しています。しかし2025年時点での実際の技能労働者数は286万人になると予測されていたのです。一般社団法人日本建設業連合会がまとめた建設業デジタルハンドブックで、2022年の建設技能者数を調べた所305万人で、試算よりは多いものの人手不足が解消されているとは言えません。

一方、建設業デジタルハンドブックの中で「55才以上労働者の割合を全産業と建設業で比較」してみた所、以下のような結果となりました。

2002年2022年
全産業23.7%31.5%
建設業24.8%35.9%

調査開始後20年で55才以上の人の割合は10%前後増加しました。全産業と建設業の差は2002年には1.1%でしたが、2022年には4.4%と4倍に拡大しています。高齢化が急激に進んでいるのがわかります。

人手不足と高齢化の課題を抱えた建設業界が、「ドローン技術を活用して効率化を図りながら働きやすい環境作り」を目指していることが伺えます。

参考:国土交通省「第1回建設産業政策会議資料」

参考:一般社団法人日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック「4.建設労働」 

生産性の向上を図るため

i-Constructionのホームページに掲載されている「i-Construction推進に向けたロードマップ」では、全ての建設生産プロセスでICTや3次元データ等を活用していると分かります。ロードマップ内では2025年までに、建設現場の生産性2割向上を目指す目標が掲げられています。

ドローンの技術も3次元調査・測量データの収集などに用いられ、目標達成に一役買うと期待されている状況です。

この目標を達成することで、新3Kと呼ばれる給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる建設現場作りと、Society5.0を支えるインフラマネジメントシステムの構築が実現するでしょう。

参考:i-Construction公式ホームページ

ドローンを建設業で活用するために取得したい資格

ドローンを建設業で活用するために取得したい資格

ドローンの資格は国家資格民間資格の2種類にわけられます。

国家資格とは、国の法律に基づく資格を指し、民間資格とは民間の団体や企業がそれぞれ独自の審査基準を設けて認定する資格を指します。

国家資格は法律という全国一律の基準で認定されるているほか、飛行ごとの申請が不要になって手続きがスムーズです。ドローンの資格を取得するなら、国家資格の無人航空機操縦者技能証明の取得がおすすめです。

無人航空機操縦者技能証明について解説します。

資格制度の概要

無人航空機操縦者技能証明とは航空法に基づいた国家資格で、全てのドローン飛行において必須の資格ではありません。

2022年12月5日から無人航空機操縦者技能証明制度が開始され、ドローンを航空法の規制対象となる空域・方法(特定飛行)で飛行させるために必要な知識と能力に関する試験を行い、合格者には技能証明書が交付されることとなりました。

技能証明の区分は次の2種類です。

区分概要
一等無人航空機操縦士カテゴリーⅢの飛行(特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置をしないで行う飛行)ができる
二等無人航空機操縦士カテゴリーⅡの飛行(特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置をした上で行う飛行)ができる

技能証明書を申請する際は技能証明の区分、操縦する無人航空機の種類(マルチローター、ヘリコプター、飛行機)の選択が必要です。

技能証明の区分をどうするか考えるためにも、まずは自社ではドローンを用いてどのような飛行を行いたいのかをはっきりさせておきましょう。

資格取得までの流れ

無人航空機操縦者技能証明の資格取得までの流れは以下の通りです。

段階 概要
資格取得にかかる費用を確認する資格取得には講習受講費用、受験申請費用、交付申請費用がかかる
本人確認の手続きをする原則オンラインで行う
手続きが終わると登録講習機関における講習受付、指定試験機関における試験受付などで使用する「技能証明申請者番号」がもらえる
本人確認に使えるのはマイナンバーカード、運転免許証、パスポート、健康保険証、本籍の記載のある住民票の写し、本人写真
登録講習機関で受講登録講習機関でドローンに関する知識・能力についての学科と実地の無人航空機講習を受講する
登録講習機関において無人航空機講習を修了した場合、指定試験機関での実地試験が免除される
指定試験機関で受験指定試験機関に受験申請をする
学科試験・実地試験・身体検査を受ける
実地試験は学科試験に合格しないと受けられない
技能証明書の交付申請試験に合格したら国土交通省に対して技能証明書の交付申請手続きを原則オンライン(DIPS2.0)で行う
手数料を納付する

無人航空機レベル4飛行ポータルサイトで資格取得までの詳細な流れを確認し、不明点があれば無人航空機ヘルプデスク(050-3818-9961)に相談するのがよいでしょう。

資格取得にかかる費用

無人航空機操縦者技能証明の資格を取得するには前の項目で講習受講費用、受験申請費用、交付申請費用がかかると説明しました。

まず講習受講費用ですが、国土交通省のホームページで登録講習機関情報一覧が公開されているため、機関名から検索して確認するとよいでしょう。

受験申請費用は学科試験、実地試験、身体検査それぞれに費用が異なるため無人航空機操縦試験のホームページで確認しましょう。

交付申請費用は国土交通省のホームページで交付手数料と登録免許税についての詳細が発信されているので内容を見ておくのがおすすめです。

資格取得にかかるおおまかな予算を把握しておくためにも、費用については事前にしっかりと確認しておいてください。

参考:国土交通省「無人航空機操縦者技能証明等」

参考:無人航空機レベル4飛行ポータルサイト「無人航空機操縦者技能証明等」

ドローンを建設業で活用するために使える補助金・助成金

ドローンを建設業で活用するために使える補助金・助成金

ドローン建設業で活用するために使える補助金や助成金にはどのようなものがあるのでしょうか。

5つご紹介します。

ものづくり補助金

2024年に経済産業省が作成したドローンの関連予算の資料で、企業を対象に開発などの関連予算、導入・実証等の関連予算として計上されているのがものづくり補助金です。ものづくり補助金は、ドローン関連では生産性向上のための革新的なドローン製品やサービス開発に必要な設備の導入のために活用されるイメージを持つとよいでしょう。

補助金の概要は以下の通りです。

補助上限補助率
省力化(オーダーメイド)枠750万~8,000万(従業員規模による1/2
小規模再生事業者2/3
1,500万円までは1/2か2/3、1,500万円を超える部分は1/3
製品・サービス高付加価値化枠 通常類型750万円~1,250万円(従業員規模による)1/2
小規模再生事業者2/3
新型コロナ加速化特例2/3
製品・サービス高付加価値化枠 成長分野進出類型(DX・GX)1,000万~2,500万円(従業員規模による)2/3
グローバル枠3,000万円1/2
小規模事業者2/3

申請のスケジュールや詳細な公募要領はものづくり補助金総合サイトで確認するようにしましょう。

また具体的にものづくり補助金を使うことで、建設業のドローン活用でどのような成果が挙げられるのかイメージしにくい人は、ものづくり補助金総合サイトの成果事例を見てるのも1つの方法です。2024年7月現在、成果事例検索の検索窓に「ドローン」と入力して検索をすると88件の事例が表示されるため、業種で建設業関連の事例を探すと自分のイメージに合った事例が見つかるでしょう。

参考:経済産業省「R6年度 ドローン関連予算」

参考:ものづくり補助金総合サイト

成長型中小企業等研究開発支援事業

2024年に経済産業省が作成したドローンの関連予算の資料で、中小企業等が大学・公設試などと連携して行う研究開発やサービスモデルの開発を支援するための予算として計上されているのが、成長型中小企業等研究開発支援事業です。

成長型中小企業等研究開発支援事業は、ドローン関連ではドローン関連部品の開発・製造に必要な基盤技術の開発や、ドローンや関連システムなどを活用した新サービス・新システムの開発に活用されるイメージを持つとよいでしょう。

補助金の概要は以下の通りです。

補助上限補助率
通常枠4,500万円/年(3年間総額9,750万円)原則2/3
出資獲得枠1億/年(3年間の総額3億円)原則2/3

ドローンを使用するのは地方公共団体や大手の企業というイメージが強いかもしれませんが、この補助金はそもそも中小企業の持続的な成長を促す目的があります。

今まで予算を大きくドローンに割けなかった建設業の中小企業でドローン活用に興味のある人は、この補助金について知っておくのをおすすめします。

参考:経済産業省「R6年度 ドローン関連予算」

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者の定義に当てはまっている企業の場合、小規模事業者持続化補助金を申請するのもおすすめです。

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃金引上げ、インボイス導入など)に対応するため経営計画を作り、それに基づいて販路開拓の取組みなどを行った場合経費の一部を補助するものです。

補助金の概要は以下の通りです。

補助上限 補助率 インボイス特例
通常枠2/350万円50万円(インボイス特例の要件を満たしている場合は、補助上限額に50万円を上乗せ)50万円
賃金引上げ枠2/3200万円50万円(インボイス特例の要件を満たしている場合は、補助上限額に50万円を上乗せ)50万円
卒業枠2/3200万円50万円(インボイス特例の要件を満たしている場合は、補助上限額に50万円を上乗せ)50万円
後継者支援枠2/3200万円50万円(インボイス特例の要件を満たしている場合は、補助上限額に50万円を上乗せ)50万円
創業枠2/3200万円50万円(インボイス特例の要件を満たしている場合は、補助上限額に50万円を上乗せ)50万円

補助金が本当に採択されるのか不安な場合、全国商工会連合会の小規模事業者持続化補助金のホームページを確認すると、採択者一覧のページから採択された事業者名とどのような補助事業が採択されたかがわかるので、参考にしてみてください。

参考:中小企業庁「『第16回小規模事業者持続化補助金<一般型>』の公募を開始しました」

参考:全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金」

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業の事業再構築を支援するために設けられた補助金です。

補助金の概要は次の通りです。

事業類型補助上限補助率
成長分野進出枠(通常類型)3,000万円中小1/2
中堅1/3
成長分野進出枠(GX進出類型)中小5,000万円
中堅1億円
中小1/2
中堅1/3
コロナ回復加速化枠(通常類型)2,000万円中小2/3
中堅1/2
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)1,500万円中小3/4
中堅2/3
サプライチェーン強靱化枠3億円中小1/2
中堅1/3

事業再構築補助金を使いたい場合、何か新たなビジネスモデルを用いて事業を構築することが多いでしょう。

ドローンはまだビジネスのジャンルにおいても実証実験が広く行われている段階です。さまざまなビジネスモデルを想定できるので、建設業における新たな事業での活用にチャレンジしやすいでしょう。

参考:事業再構築補助金公式ホームページ

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、事業主等などが雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度のことです。

ドローン関連では、ドローンスクール受講の際に使うことができます。

人材開発支援助成金には6つのコースがありますが、その中でドローンスクール受講の際に使うことができるのは「人材育成支援コース」です。

人材育成支援コースの概要は次の通りです。

企業の規模訓練時間が10時間以上 100時間未満 訓練時間が100時間以上200時間未満200時間以上
中小企業事業主や事業主団体など15万円30万円50万円
中小企業以外の事業主10万円20万円30万円

建築業界において従業員のスキルアップのためにドローンの操縦技術を身につけさせたいなら、人材開発支援助成金の申請を考えてみるのもよいでしょう。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

まとめ

ドローンを建設業で活用する方法と資格・補助金に関する内容

ドローン建設業への活用は、国土交通行政のDX、建設業が抱える人手不足、従業員の高齢化などの課題を背景に推進されつつあります。国家資格制度や補助金・助成金制度も整ってきたため今後さらに導入が進むと予想されるでしょう。

この記事も参考にして、自社の事業でのドローン活用を積極的に進めてみてください。

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この記事を書いた人

1等無人航空機操縦士資格保有

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