ドローン測量のやり方とは?資格取得から機体選定まで測量の基本を解説

公開:2024.08.02 

ドローン測量

ドローン測量のやり方や機体選定の方法

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ドローン測量は、従来の測量方法よりも短時間で広範囲のデータを取得できる革新的なテクノロジーです。

建設・土木分野で注目を集めるドローン測量。その高い効率性と精度を実現するには、どのような事前知識が必要なのでしょうか。

本記事では、測量初心者の方にも分かりやすく、ドローン測量の基本から必要な資格、最適な機体の選び方、実践的な測量手順まで、専門家の視点で詳しく解説します。

ドローン測量とは

ドローン測量について

ドローン測量とは、ドローンに専用カメラやレーザー測距装置を取り付けて、上空から地形や建物の情報を収集する最先端の測量方法です。

ドローンを使用して行える測量方法は写真測量とレーザー測量の2種類があり、測量を行う地形や環境、要件等に合わせて測量方法が選択されます。測量に使用するドローンでは機体に搭載された機器を使って、地表の詳細なデータを取得します。取得されたデータは地図作成や建設計画、農業管理、災害対策など、さまざまな分野で利用可能です。

従来の測量方法との違い

従来の測量方法では、地上に設置した測量機器を使って人が直接測量を行います。これには多くの時間と労力がかかり、特に広範囲の測量やアクセスが難しい場所での測量は困難でした。

一方、ドローン測量では上空から広範囲のデータを一度に取得できるため、短時間で効率的に測量が行えます。

人が立ち入るのが危険な場所でも安全に測量を行えるのはドローン測量ならの利点です。

ドローンで測量を行うメリット

ドローン測量には多くのメリットがあります。

  • 効率性:短時間で広範囲のデータを取得できるため、測量作業が迅速に完了
  • 安全性:人が立ち入るのが危険な場所でも、ドローンを使えば安全に測量が可能
  • コスト削減:測量にかかる人員や時間を大幅に削減できるため、コスト面でも有利
  • 高精度:高解像度カメラやレーザー測距装置を使用することで、非常に高精度なデータを取得可能
  • リアルタイムデータ:ドローンからリアルタイムでデータを取得できるため、即座に解析や対応が可能

ドローンから撮影した写真や測距データは、専用のソフトウェアを使って解析し、三次元の地図や模型、3Dモデリングなどを作成可能です。

この三次元データは、建設工事の設計や施工管理、災害対策、インフラ点検など、様々な分野で活用されています。

ドローン測量の具体的なやり方

ドローン測量の具体的な方法

ドローン測量の手順は、大きく分けて以下の8つのステップに分かれています。

現地調査(踏査)

まず、測量を行う現地の状況を確認します。障害物の有無や通信状況をチェックし、ドローン測量に適しているかを判断します。

施工計画書の作成

次に、発注者から必要な設計図書を入手し、施工計画書を作成します。この計画書には、測量の目的、範囲、使用する機器、飛行ルート、安全対策などが含まれます。

飛行ルートの作成

専用のソフトウェアを使用して、最適な飛行ルート、高度、撮影間隔などを決定します。また、安全対策や飛行許可申請が必要な場合は事前に対応します。天候を考慮して測量実施日と予備日を設定します。

標定点(GCP)・検証点の測定、対空標識の設置

測量の信頼性と精度を確保するために、地上に標定点(Ground Control Points, GCP)や、検証点(Check Points, CHP)を設置します。これにより、ドローンで取得したデータの位置情報を正確に補正できます。

ドローン撮影

事前に作成した飛行ルートに沿ってドローンを飛行させ、上空からデータを取得します。撮影は自動化されており、設定した間隔で高解像度の写真やレーザーデータを収集します。

撮影データ解析・三次元データ作成

取得した写真データやレーザーデータを専用ソフトウェアで解析し、三次元データを作成します。このデータは、地形モデルや建物の3Dモデルとして利用されます。

精度確認

作成したデータの精度を確認します。標定点や検証点を基に、データの位置情報が正確であるかをチェックします。

報告書の作成・納品

最後に、精度試験結果報告書を作成し、三次元データとともに発注者に納品します。報告書には、測量の手順、使用した機器、取得したデータの精度などが記載されます。

ドローン測量を行う際に必要な資格や満たすべき要件は?

ドローンを使用して測量を行う際、ドローン測量時の操縦に必要な資格は特にありません。

測量時の操縦者に対しては、一定の技能や知識、経験を有することが求められています。

そして、ドローンの操縦に関する技能等を有していれば、操縦者が測量士や測量士補等の資格を必ず保有している必要はありません。

ドローン測量の操縦者の要件に関しては、以下のように定められています。

  • 操縦者は、UAVの操縦に関して一定の知識と技能、経験を有する者であることが必要であり、これらの知識や技能、経験については、技能証明等により証明されるか、飛行実績の記録等で明らかになっているなど、客観的に示すことができるものである必要がある。
  • 測量作業において使用する機体と同じモデルの機種を対象に、一定時間以上(3時間以上)の操縦経験を有していること。
  • 測量作業において使用する前の一定期間(90日)内に、使用する機体と同じモデルの機種の操縦を1時間以上行っていること。
  • 測量作業において使用する機体と同じモデルの機種で、自動操縦を行った経験を有すること。

参考リンク:公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案)

測量士または測量士補の資格が必要になる場面

公共測量においては、測量法に基づき測量士または測量士補の資格を有する者が測量作業を実施、または管理監督することが求められます。ドローン測量も公共測量の一環として行われる場合は、この規定が適用されます。

なお、現場班長は測量士または測量士補の資格を有しているのが望ましく、運行計画を立てる際には、測量士または測量士補が関与する必要があります。

具体的には、以下の場面で測量士または測量士補の関与が必要とされています。

  1. 施工計画書の作成段階
  2. 標定点(GCP)・検証点の測定、対空標識の設置段階
  3. 撮影データ解析・三次元データ作成段階
  4. 精度確認段階
  5. 報告書の作成・納品段階

ドローン測量で取得しておくと良い民間資格

ドローン測量パイロットとしての要件を満たして活動するには、操縦や測量に関する民間資格を取得できるドローンスクールを利用するのがオススメです。

例えば、埼玉県に本部があるサイニチドローンスクールでは、一般的なドローン操縦技能を指導するカリキュラムのほかに、産業利用向けの測量基本技術コースを3種類用意しています。

  • 測量基本技術コース(初級)
  • 測量基本技術コース(中級管理士)
  • 測量基本技術コース(中級技能士)

測量基本技術コース(初級)では、測量士による空中写真測量の補助、自動航行による空中写真測量に必要な素材収集と簡易解析、空中写真測量の解析方法理解、安全管理など実践的知識を習得できます。

今まで測量自体に縁がなかった方はもちろん、今後ドローン測量を行う全ての人におすすめの「基本を学べるコース」です。

また、サイニチドローンスクールは高精度なドローン測量に関する技術の教育と普及を目指すDSEROという団体の認定スクールであるため、それぞれのコースを卒業した後は民間資格「ドローン測量管理士」「ドローン測量技能士」を取得できます。各コースでは座学だけではなく、実際にドローンを操縦する実技講習も行われるため、測量ドローンパイロットとしての要件を満たしたい方には特にオススメです。

測量時のドローン操縦パイロットに特別な資格は必要無いと先述しました。

しかし、今後長い目で見据えると、操縦パイロットから管理職への移行や解析部門などに携わる可能性がゼロではありません。今後の展望を広げるためにも、自分が撮影した測量データがどのように活用され、どう役立っているのかなどを知り、操縦技能だけではなく測量全般の知識や技能を習得しておくのが良いでしょう。

参考リンク:測量基本技術コース(初級) | サイニチドローンスクール

ドローン測量で機体に求められる要件やスペック、基準

ドローン測量で期待に求められるスペック

ドローン測量に使用する機体はバッテリー駆動の中・小型のマルチコプターで、総重量(機体、バッテリー、カメラなどの測量機器を含む離陸時の全重量)が25kg未満のものが対象です。固定翼のUAVや25kg以上の機体は対象外とされています。

その他で、測量用ドローンで求められる要件などを紹介します。

機体の性能と外観

使用するドローンは、安全確保の観点から以下の性能と外観を有することが求められます。

  • 運航性能:十分かつ安定した運航性能を持つ機体で、最大運航重量、連続航続可能時間、最高運航速度、運航可能最大風速、無線の到達範囲などが明示されている必要があります。
  • 構造:機体に鋭利な突起物がない構造であること。特に回転翼は高速で回転するため、プロペラガードを装着するなどの安全装備が必要です。

機体に実装が求められる機能

  • 自動運航機能:公共測量においては、離着陸時を除き自動運航を行うことが原則です。これはGNSSなどを使用して位置情報を取得し、あらかじめ計画したルートに従って自律的に運航する機能を指します。
  • 運航範囲の安全確保:運航範囲の直下および周辺に不特定の第三者が存在しないことが原則です。これは、機体が故障して落下する事態に備えるためです。

測量用ドローンの選び方

測量用ドローンの選び方

測量用ドローンを選定する際には、実際の測量現場を想定し、以下のポイントに焦点を当てることが重要です。

ペイロードの性能

まず、ペイロードの性能が非常に重要です。

高解像度のカメラやレーザースキャナーを搭載できるドローンを選ぶことで、高精度な測量データを取得できます。

カメラの画素数やレンズの画角、レーザーの精度や測定レンジなど、測量の目的に適した性能を持つ機器を搭載・選定できる機体は非常に重宝します。

拡張性とアップグレード性

次に、拡張性とアップグレード性も重視すべきポイントです。ペイロードの交換や追加が容易で様々な測量ニーズに対応できるドローンを選ぶことで、長期的な運用が可能になります。また、ソフトウェアのアップデートにより、新しい機能や性能の向上が図れる機体を選ぶことも重要です。

測量の効率

さらに、専用アプリやソフトウェアとの連携がスムーズに行えるドローンを選ぶことで、効率的な測量が可能になります。

自律飛行や自動航行機能を備えたドローンは、あらかじめ設定した飛行ルートを自律的に飛行でき、測量作業の効率化に大いに役立ちます。

ドローン測量の基本を抑えた上で導入を検討してみよう

ドローン測量を導入して効率化アップ

今後、ドローン測量を導入する上で知っておきたい基本的な知識について解説しました。

ドローン測量の流れ自体は一般的な測量と変わりませんが、ドローンで測量を行う際は、より一層安全性に配慮する必要があります。

測量ドローンパイロットには、自分が担当するドローン操縦技能だけでなく測量全般に関する知識や技能も習得させることで「測量業務全般を、より効率的に回すための重要な人材として育成」可能です。

ドローンでの測量事業の参入を検討する場合は、まず前提知識の確認として本記事を読み返してみてください。

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この記事を書いた人

1等無人航空機操縦士資格保有

ドローンの可能性を広げるため、有益な情報の発信や飛行に関する情報をお届けします。人手不足の解決や、実現不可能だったことを実現していく可能性を秘めたドローンを様々な方へ理解いただき、有用性を実感できるようなメディアにします。

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