【要注意】ドローン操縦者が勘違いしがちな関連法律の疑問を徹底解説!
公開:2024.11.20
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「模型航空機と小型無人機の違いは何?」「遠隔操作と自動操縦の違いは?」のようなドローンに関する質問をされた時、パッと回答できますか?
本記事は、回答に詰まってしまった方のように、ドローンに関する用語や法令の解釈があやふやな方におすすめの記事です。
今回は類似用語の違いや法令解釈を基本から抑え、適切にドローンを運用するための基本をお伝えします。
ドローン関連の類似用語の違いを解説
ドローンには類似した用語が複数存在します。
詳細や類似用語ごとの違いを把握しないと、スムーズなドローンビジネスに支障が生じる可能性もるので要注意です。
ドローン、無人航空機、模型航空機、小型無人機の違い
ドローンを示す意味で無人航空機が使われる事はありますが、実際は無人航空機というカテゴリーの中にドローンが含まれていることを抑えておきましょう。
航空法において無人航空機は100g以上と定義されており、逆に100g未満の機体は模型航空機として扱われます。
模型航空機は空港周辺等以外は航空法で飛行規制されていません。
しかし、小型無人機等飛行禁止法では日本国内の重要施設上空・周辺での無人航空機と小型無人機の飛行を規制しています。
2つの法律の間で無人航空機の定義は同じですが、小型無人機等飛行禁止法では100g未満の機体も小型無人機に分類されるため規制対象です。
そのため、航空法における模型航空機は小型無人機の中に含まれています。
「遠隔操作」と「自動操縦」の違い
遠隔操作と自動操縦は同じような意味合いに感じますが、遠隔操作は手動操縦、自動操縦はプログラミング等によるほぼ完全自動操縦のような違いがあります。
遠隔操作とは、操縦者がプロポ(送信機)などの操縦装置を使い離れた場所からドローンを操作する操縦方法です。操縦者は、ドローンから離れた場所でプロポを操作してすることで、ドローンの飛行を自分の手で制御します。
一方、自動操縦は事前にドローンが指示通り飛行するように組まれたプログラムを使用して自動で飛行させる操縦方法です。例えば測量では事前に設定された飛行経路に沿ってドローンが自動で撮影を行います。
ドローンに搭載されているリターントゥホーム機能は自動で帰還するまでは自動操縦に該当しますが、途中から操縦者が自分で操縦する場合は半自動操縦に分類されることが多いです。
「係留」と「えい航」の違い
係留とえい航はどちらもドローンの飛行範囲を制限する方法ですが、固定している物体が移動可能か否かで分類されます。
係留はドローンを紐やワイヤー等で地上の固定物や地表に繋ぎ、飛行範囲を物理的に制限する方法です。係留の場合は確実に動かない物とドローンを繋ぐため、例えば木や電柱、物件の柱、建設現場の足場のような固定物に繋がれた状態であれば、その範囲内で航空法に抵触せず飛行出来ます。
一方、えい航とは、ドローンを車両や航空機等の移動する物体に固定し、移動する物体に合わせてドローンを移動させる方法です。自動車の屋根や船などとドローンを繋ぐ場合はえい航に該当します。
なお、ガードレールへの固定は固定されていてもドローンがガードレールに沿って移動するため、係留ではなくえい航です。
第三者の定義
ドローンの飛行において、第三者とはドローンの飛行に一切関係していない人物のことを意味します。
第三者に該当するのは、直接的に関与している者と間接的に関与している者の2種類です。
- 直接関与者:操縦者、補助者、操縦者の交代要員、誘導員、後学のために検収として参加している者など、ドローンの飛行に直接関与している者
- 間接関与者:映画や番組のドローン撮影に関与する俳優やスタッフ、空撮する人文字に参加する社員や学生、点検対象設備の管理者や農薬散布を行う農地の所有者や管理者などが該当します。
間接関与者は操縦者から見て相手が飛行目的の一部にでも関与していると判断し、安全上の指示等を受けている人物です。ただし、間接関与者はドローン飛行に関与するかを自分で決定した人に限ります。
「DID上空」と「第三者上空」の違い
DID上空とは、国勢調査で設定された人口集中地区(DID)の上空のことを意味しますが、第三者上空は立入管理措置が施されておらず、ドローンの飛行経路直下に第三者が立ち入る可能性がある状態の空域のことです。
DID上空(人口集中地区)は5年に1回行われる国勢調査の結果に基づき、人口密度が高い地域を意味します。DID上空をドローンが飛行する場合は国土交通省から許可承認を受けなければいけません。
第三者上空は補助者の配置や立入制限の看板設置等の立入管理措置が無い状態で実施する、飛行経路下に関係者以外の第三者が立ち入る可能性がある上空です。
立入管理措置が十分に機能している場合はDID上空を飛行していても、第三者上空に該当しません。ただし、立入管理措置が不十分な場合は第三者上空での飛行に該当します。
飛行カテゴリーと飛行レベルの違い
定義が混在しがちな飛行カテゴリーと飛行レベルは、飛行レベルが**「飛行難易度の分類」であり、飛行カテゴリーは「飛行リスク別の分類」**のようにイメージすると違いが分かりやすいです。
飛行カテゴリーはドローン飛行のリスクに基づく分類であり、
- カテゴリーI:一般的な飛行
- カテゴリーII:特別な許可が必要だが飛行経路下の人の立ち入りを管理
- カテゴリーIII:特別な許可が必要で飛行経路下に人がいる可能性がある
この3つに分かれています。
一方、飛行レベルは飛行の難しさや複雑さに基づく分類であり、以下のように分類されています。
- レベル1:目視内での手動操縦
- レベル2:目視内での自動飛行
- レベル3:無人地帯での目視外飛行、補助者あり
- レベル4:有人地帯での目視外飛行
レベル3飛行とレベル3.5飛行の違い
レベル3飛行とレベル3.5飛行はどちらも無人地帯での目視外飛行ですが、補助者の有無が大きな違いです。
レベル3飛行は目視外飛行でドローンを飛行させる際に、操縦者の代わりに補助者を配置します。
- 広大な農地での農薬散布:操縦者が見えない場所まで飛ばす
- 太陽光発電所のパネル点検:広大な敷地内を目視外で飛行する
レベル3.5では補助者を配置せず、代わりに機体に搭載されたカメラやセンサーを代替的措置として使用します。また、目視内飛行の限定解除を受けた無人航空機操縦士を取得した者が操縦者でなければいけません。
- 離島間の物資輸送:操縦者から見えない海上を機体のカメラで周囲を確認して飛行する
- 火山地帯の観測:危険で人が近づけない場所をカメラやセンサーを使用して飛行する
ドローンの所有者と使用者の違い
所有者とは、ドローンを実際に持っている人や会社のことです。例えばドローンを買った個人のほか、会社・団体が購入したドローンの場合は、その会社が所有者です。一方、使用者はドローンを実際に飛ばしたり、管理したりする人や団体を意味します。
個人が購入したドローンの場合その個人が所有者となり、リース契約やレンタル契約の場合はサービスとしてドローンを貸し出している事業者が所有者として扱われます。
ただし、レンタル契約の場合は所有者・使用者の両方がレンタル会社となることは注意しましょう。
機体登録未対応の場合は所有者に罰則が科されますが、基本的に航空法が規制対象としているのは「ドローンを飛行させる者」つまり操縦者です。そのため、最終責任者は所有者ではなく使用者となる傾向にあります。
航空法における事故と重大インシデントの違い
ドローン飛行時の事故は人や物件に実際に被害が出た場合のことを示し、重大インシデントは重大な事故に綱がる可能性があった危険な状況が発生した場合を指します。
事故は以下のような場合が該当します。
- 関係者を含む人に衝突するなどして、重傷以上のケガを負わせた場合
- 建物や車両、電柱、外壁等の物件に衝突し、軽微でも損傷を与えてしまった場合
- 有人の航空機と接触したり衝突したりした場合
一方、重大インシデントは、事故には至らなかったものの、重大な事故につながる可能性のある事態を指します。
- 有人の航空機と接触や衝突はしなかったが、ドローンが接触する恐れがあった場合
- 人に当たって軽傷を負わせた場合
- 飛行中のドローンが機体の不具合で制御不能になったり発火したりした場合
コンパスエラーの原因となる電波干渉と電波障害の違い
ドローンの操縦は無線通信で行われており、無線通信では電波障害と電波干渉というそれぞれ原因が異なる通信障害が起きる場合があります。 電波干渉は、複数の電波が重なり合って互いに影響を与える現象です。同じ周波数帯を使用する機器が近くにあったり、強い電波を出す機器があったりすると起こります。例えば、1つの部屋で多くの人が同時に話をしているような状況では会話が聞き取りにくくなるような状態です。
電波干渉の原因としては、パソコンやスマホ、自動車、高速道路のETC等があります。
一方、電波障害は、電波の伝わり方が妨げられる現象です。建物や山などの物理的な障害物、雨や雪などの天候、電気製品からの不要な電波が原因となります。例えば、高層ビルがテレビのアンテナと送信所の間にあると、テレビの映りが悪くなることがあります。
ドローン操縦者が誤解しがちな航空法の解釈を解説
ドローン操縦者が誤解してしまう「航空法」は、法律に触れたり罰金が発生したり、業務を進めるうえで大きなトラブルの種です。
ドローンビジネスをスムーズに進めるためにも、ドローン操縦者が誤解しやすい「航空法」の詳細を把握しておきましょう。
航空法においてドローン操縦者が例外無く守るべき義務は?
航空法で定められている、ドローン操縦者が守るべき義務は以下の通りです。
ただし、特定飛行に該当しない飛行の場合、飛行計画の通報及び飛行日誌の作成は義務から推奨に変わります。
- 機体登録
- リモートID
- 飛行許可の取得
- 飛行承認の取得
- 飛行計画の通報
- 飛行日誌作成
- 飛行ルールの遵守
- アルコールや薬物の影響下での飛行禁止
- 飛行前の安全確認
- 昼間の飛行(日出から日没まで)
- 目視での常時監視
- 人や物件から30m以上の距離を保つ
- 多数の人が集まる場所での飛行禁止
- 危険物輸送の禁止
- 物件投下の禁止
- 事故等の対応
航空法でドローン操縦者に科される事がある罰則は?
航空法に基づき、ドローン操縦者が義務を怠った場合に科される主な罰則は以下の通りです。
- 無許可での飛行禁止空域での飛行
- 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 飛行の方法違反
- 50万円以下の罰
- 機体登録をしていないドローンを飛行させた場合
- 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- リモートID対応を怠った場合
- 50万円以下の罰金
- 特定飛行実施の際に飛行計画を通報せず実施した場合
- 30万円以下の罰金
- 事故等の報告義務違反
- 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 特定飛行時に飛行日誌を携帯しなかったり、記載漏れや虚偽の記載があった場合
- 10万円以下の罰金
「目視飛行」はどんな飛行を意味する?
ドローン操縦における目視飛行は、操縦者が自分の肉眼でドローンの位置や姿勢等を確認しながら操縦する飛行方法です。
プロポに搭載されているスマートフォンやモニターでは機体搭載カメラの映像を確認可能ですが、肉眼ではなくカメラやゴーグルから伝達される映像を見続ける操縦方法は目視外飛行に該当します。
サングラスやコンタクトを着用した状態で操縦者が自分の目で機体を確認する場合は目視外飛行です。なお、安全確認のためにモニターを一瞬チラ見する程度であれば、目視外飛行に該当しません。
目視外飛行の例としては、以下のような飛行内容があります。
- 操縦者自身の肉眼ではなく、補助者やその他飛行関係者が肉眼で機体の状況を確認した情報をもとに行う飛行
- FPVゴーグルや機体搭載カメラの映像を見ながら操縦する飛行
高度150m以上の空域でも例外的に飛行可能となる範囲は?
高度150m以上の空域での飛行は航空法で禁止されていますが、150m以上の高度がある高層建築物や高い構造物の周辺においては、構造物から30m以内の空域に限り飛行可能です。なお、30m以内であってもその他の飛行ルールや安全基準は必ず守らなければいけません。
- 超高層ビルの点検:200m級の高層ビルでも、ビルの表面から30m以内であれば150m以上の高さでも飛行できます。
- 電波塔のメンテナンス:300m以上ある電波塔の表面から30m以内のドローン飛行は許可されます。
- 長大橋の点検:高さ150m以上ある橋の構造調査する際も橋の表面から30m以内であれば問題ありません。
- 高い煙突の検査:工場や発電所にある150m以上の煙突を点検する際も、周囲30m以内であればドローンを飛行可能です。
国家資格を取得すれば許可申請無しでドローンを操縦可能?
ドローンを含む無人航空機に関する国家資格「無人航空機操縦士」を取得すれば飛行許可申請無しで飛行可能という噂がありますが、これはデマです。
正確には国家資格を取得していずれかの型式認証を取得しているドローンを「取得した国家資格の条件」で飛行する時のみ、飛行許可申請を省略して飛行出来ます。例えば国家資格取得時に「目視内飛行」の限定変更を行っている場合は、基本飛行と目視外飛行を行う時のみ許可承認申請を免除可能です。
カテゴリーⅡ飛行では型式認証を受けた機体使用時であれば国家資格の等級を問いませんが、カテゴリーⅢ飛行については一等無人航空機操縦士のみ飛行可能条件として認定されます。
なお、同じカテゴリーⅡ飛行でも難易度が高い飛行は一部審査の省略だけとなり、申請自体は必要にな場合もあります。
包括申請を取得していても実施できない飛行内容・飛行方法は?
以下の飛行方法は、包括申請による許可承認を取得していても、場所を特定した飛行として許可承認を得なければいけません。
- **地表または水面から150m以上の高さの空域における飛行:**航空機との衝突リスクが高いため
- 補助者を配置しない目視外飛行:周囲の状況把握が困難で安全性が低下するため
- 空港等周辺における飛行:航空機の離着陸に影響を与える可能性が高くいため
- 催し場所上空における飛行:事故時の被害が甚大になる可能性が高いため
- 趣味目的の飛行:包括申請は業務目的の飛行に対して発行されるものであるため
- 研究開発目的の飛行理由:研究開発段階の機体や飛行方法は、安全性に懸念があるため
- 夜間飛行における目視外飛行またはDID上空の飛行:夜間の視界不良下での飛行は事故リスクが高いため
無人航空機登録制度(機体登録)で所有者に義務づけられている事は?
2022年に施行された無人航空機登録制度において、ドローンの所有者は以下の3つの主要な義務に対応しなければいけません。
- 機体登録の申請:100g以上のすべてのドローンはDIPS2.0を通じてオンラインで登録申請を行います。申請には本人確認書類や法人名義の場合は会社情報が必要です。
- 登録記号の表示:登録完了後、発行される固有の登録記号を機体に明示します。表示方法や場所は規定に従いましょう。
- リモートIDの連携:登録記号の表示に加え、リモートID機能を搭載しなければなりません。これにより、飛行中に機体の識別情報を電波で発信し、登録機体かどうかを判別できるようになります。
これらの義務対応を行った場合、所有者が懲役または罰金等の罰則が科されます。
補助者の役割は何があるの?
補助者は飛行全体の安全性を向上させるためには欠かせない、必要なポジションです。操縦者の集中力を維持したり緊急対応を行ったりするため、補助者には以下のような役割が求められます。
- 第三者の立入管理:第三者が飛行エリアに立ち入らないよう監視し、必要に応じて注意喚起等を行います。
- 有人機等の監視:航空局からの通知に基づき上空を監視し、有人機の接近を確認したら操縦者に着陸指示を出します。
- 自機の監視:操縦者は操縦に意識が傾いているため、例えば機体が安定していない場合は磁気の影響がないかを確認等を行い、慎重に飛行するよう操縦者に伝えます。
- 気象状況の監視:天候の急変に備え、補助者は常に気象状況を監視します。例えば30分以内に雨が降りそうな場合、速やかに着陸するよう操縦者に伝えます。
農薬散布が該当する飛行方法は物件投下だけ?
ドローンによる農薬散布は物件投下のみ該当すると考える方もいますが、実際は物件投下だけではなく「危険物の輸送」も該当する飛行内容です。もちろん、実際の飛行では目視外飛行等が含まれることもあります。
危険物は爆発したり燃えたりする可能性がある物件だけでなく、他者に危害を加える物件も対象です。もしドローンに搭載した農薬が人の頭上に落下した場合、怪我だけではなく毒性物質として人体に悪影響を及ぼす可能性もあるため、危険物に分類されています。
なお、農薬散布を行う際は物件投下・危険物輸送を行うための追加基準を満たさなければいけません。特に、物件投下は5回以上の物件投下経験がある人物が操縦する必要があります。そのほかにも細かい規制があるため、事前に物件投下と危険物輸送の追加基準を確認しておきましょう。
「知らなかった」「勘違いしてた」で法令違反しないように注意しよう
航空法をはじめとするドローンの使用・飛行を規制する各法令は難しく硬い表現が書かれていることが多く、どうしても読む際の心理的なハードルが上がりやすいです。
しかし、だからといって読まずに自分なりの誤った解釈でドローンを運用して法令に違反すれば、どんな理由があっても罰則対象になってしまいます。
自分が楽しくドローンを運用するためにも、本記事で解説したような勘違い・誤解しやすい文言がどのような意味なのかをきtんと理解し、適切にドローンを使用しましょう。
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1等無人航空機操縦士資格保有
ドローンの可能性を広げるため、有益な情報の発信や飛行に関する情報をお届けします。人手不足の解決や、実現不可能だったことを実現していく可能性を秘めたドローンを様々な方へ理解いただき、有用性を実感できるようなメディアにします。