ドローン包括申請でできることは?申請前の準備リストも一挙公開!

公開:2024.04.26  更新日:2024.06.14

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ドローンの申請する人

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「機体も買ったし、今後はドローンを屋外で飛ばそう!」と思った時、機体や備品を揃えた後に必要な手続きのひとつとして「包括申請」という手続きがあります。

包括申請という名前は知っているという方は多いかもしれません。しかし、実際に包括申請を行うと何ができて、逆に包括申請を行っても何が出来ないのかを説明することはできますか?

包括申請は「ドローンを飛ばす上で非常に便利な承認制度の一つ」です。しかし包括申請自体を理解しないで実際に飛ばそうとすると、知らないうちに航空法やその他の法令に違反してしまう可能性が高いです。

この記事ではこれからドローンを飛ばそうとする人が知っておくべき、包括申請でできることやできないことや、包括申請の事前準備として何をすべきなのかを解説します。

そもそもドローンの包括申請とは?包括申請でできること

包括申請は飛行経路を特定せずに申請可能であり、「日本全国」のような大まかな飛行予定場所を指定して申請できます。逆に飛行経路を「〒170-8630 東京都豊島区東池袋3丁目1」のように細かく指定することも可能です。

包括申請を利用する際は有効期間が原則として3ヶ月であり、最長でも1年間は有効期間内として利用できます。

もし既に許諾を受けている包括申請を更新したい場合は、有効期間が終わる2カ月前から更新申請を行うことで更新が可能です。

包括申請

引用:https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/

例えば、画像のような内容で包括申請を行った際は、「日本全国各地でのDID上空における夜間飛行、目視外飛行、人または物件から30m以上の距離が確保できない飛行」が許可されていることを意味します。

ドローン飛行のためにパイロット各位が行う包括申請の内容としては、以下のようなものが含まれることが多いです。

  • 全国各地での飛行
  • DID上空での飛行
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行(FPV含む)
  • 人または物件から30m以上の距離が確保できない飛行

ドローンの国家資格を持っている場合、包括申請は不要?

「ドローンの国家資格があれば包括申請や飛行許可承認申請を行わず飛ばせる」と思っている方も多いですが、正確には「国家資格を保有したパイロット」が「機体認証を受けたドローンを飛ばす時」のみ、一定の飛行において申請無しでドローンを飛ばすことが可能です。

ドローンを含む無人航空機に関する国家資格である「無人航空機操縦士」は一等・二等と等級が分かれており、これらの国家資格は申請不要でドローンを飛ばす条件のひとつです。

国家資格制度は2022年12月の航空法改正で創設されましたが、改正時には「機体認証制度」と呼ばれる自動車で言うところの車検制度も新設されました。機体認証制度も国家資格と似て第一種・第二種と分かれています。

ドローンを飛行許可承認申請無しに飛ばすには、実際に飛ばすドローンが機体認証制度にて安全性を保証されていなければいけません。

許可承認申請が必要な飛行カテゴリーの条件

私たちドローンパイロットがよく行うDID上空での飛行などは、等級・種別を問わず国家資格を保有するパイロットが機体認証を受けたドローンを飛ばす場合において飛行許可承認無しで飛行できます。ただし、飛行難易度が高い催し上空での飛行などを実施する際は、国家資格と機体認証の条件を満たしていても、申請をしなければ飛行できません。

国家資格と機体認証の条件を満たした時に申請不要で飛ばせる飛行は一般的な包括申請で実施できる飛行内容と被っているため、「国家資格を持っている場合包括申請が不要」という説はこの事を意味しています。

これだけ聞くと国家資格と機体認証を取得して包括申請無しでドローンを飛ばした方が楽だと思う方も多いでしょう。しかし、機体認証には多額の手数料がかかるため、手数料の金額と包括申請の手間を天秤にかけて検討するのがおすすめです。

現在、機体認証の手数料が安くなる「型式認証」を取得している一般向けの機体は非常に少ないため、型式認証未取得の枠で機体認証を取ることになる方が大半です。その場合、第二種機体認証の手数料であれば最低でも286,800円が発生し、3年に1回93,300円の更新手数料も発生します。このような現状のため、国家資格を保有しているパイロットでも機体認証を取得せず包括申請で飛行しているパイロットが多いのが現状です。けして安い出費ではないため、コストパフォーマンスと支払う額を比べて考えてみましょう。

ドローン飛行における包括申請と個別申請の違いは?

包括申請は全ての飛行に対応している訳ではありません。

包括申請で対応可能な飛行内容は飛行におけるリスクが比較的低い飛行のみです。そのため、危険度や難易度が高い飛行を行う際は、包括申請の許可が降りていても、別途「個別申請」を行わなければいけません。

包括申請は飛行経路を特定せずに申請可能ですが、包括申請で想定されている飛行内容は「安全管理措置などを細かく確認するリスクの高い飛行向けの申請内容ではない」ため、飛行経路を特定しなくても飛行許可が降ります。

これは目線を変えると、危険度や難易度が高い飛行を行う際は、申請された飛行経路内容を元に、航空局が安全に飛行できるか確認できなければ飛行許可が降りないということでもあります。

このような理由から、危険度や難易度が高い以下のような飛行内容は、飛行経路を特定した個別申請で許可が降りていなければ、包括申請の許可が降りていても飛行できません。

飛行経路を特定した個別申請が必要な飛行内容一覧

  • 空港等周辺における飛行
  • 地表または水面から150m以上の高さの空域における飛行
  • 人または家屋の密集している地域の上空における夜間飛行
  • 夜間における目視外飛行
  • 補助者を配置しない目視外飛行
  • 趣味目的での飛行
  • 研究開発目的での飛行
  • 【飛行経路及び日時を指定】人または家屋の密集している地域の上空で夜間における目視外飛行
  • 【飛行経路及び日時を指定】催し場所の上空における飛行

人または家屋の密集している地域の上空で夜間における目視外飛行と催し場所の上空における飛行は、より一層危険度が高いです。そのため飛行経路だけではなく、飛行実施する日時も具体的に指定した個別申請を行わなければいけません。

もし違反して規制対象となる飛行を行った場合は、50万円以下の罰金が科されます。

包括申請を行う際に満たすべき基準はドローン機種によって異なる

包括申請は、申請すれば必ず許可されるわけではありません。国土交通省航空局が確認し、安全のために修正が必要と判断した場合は、補正指示が出されます。

その補正指示に従って修正し、再度提出したうえで許可を受けなければならないので注意しましょう。

補正指示の内容は提出した包括申請の内容によって異なります。補正指示のなかには、添付写真が適切でない場合に正しい写真の添付を求められることも少なくありません。

DIPS2.0では許可を求める飛行形態ごとに追加で添付写真が必要ですが、必要な写真は各型式(機種)によって違うため注意する必要があります。

例えば、著者が保有しているPHANTOM 4 PRO+ V2.0は、ほとんどの飛行許可申請において追加写真が不要です。

しかし、DJI MINI 2であれば夜間飛行を申請する際は以下の画像のように、灯火が適切に行われているかを確認する写真などが求められます。

資料の一部を省略することができる無人航空機ではA~Gは項目で国土交通省が各区分ごとに安全性を確認しており、それぞれ以下のような飛行区分を示しています。

各型式ごとに必要な追加写真は、資料の一部を省略することができる無人航空機にて掲載されているため、自分が保有している機体の欄を確認しておきましょう。

  1. 基本的機能及び性能(審査要領4-1-1、4-1-2、最大離陸重量25kg以上の場合)
  2. 進入表面等の上空又は地表若しくは水面から150mの高さの空域における飛行のための基準(審査要領5-1(1)) 
  3. 人又は家屋の密集している地域の上空における飛行、地上又は水上の人又は物件との間に所定の距離を保てない飛行、 多数の者が集結する催し場所の上空における飛行のための基準(審査要領5-2(1)a)、5-5(1)a)、5-6(1)a)) 
  4. 夜間のための基準(審査要領5-3(1))
  5. 目視外飛行(補助者有り)のための基準(審査要領5-4(1)a)~5-4(1)c)) 
  6. 危険物の輸送を行うための基準(審査要領5-7(1))
  7. 物件投下を行うための基準(審査要領5-8(1))

個人でドローンを飛ばすための包括申請事前準備リスト

包括申請はDIPS2.0からいつでも提出できます。

しかしシステムの都合上、申請中に写真撮影を行うなど一定時間操作がない場合は強制的に中止されてしまい最初から手続きしなくてはいけません。

よりスムーズに申請できるよう、以下のような準備を行ってから包括申請を提出できるのが理想的です。これから包括申請を行う方は、複数回目を通して包括申請前の準備事項として活用してください。

包括申請前の登録及び操縦者登録は必須!

包括申請の手続きで登録できる機体情報及び操縦者情報は、事前にDIPS2.0で登録してある項目のみ選択できるため、事前に登録しておきましょう。

引用:https://www.uafp.dips.mlit.go.jp/req-appl/c01/displayviewsc_c01_02?lang=ja

なお、機体情報の登録と機体登録は手続きですので注意してください。

引用:https://www.dips-reg.mlit.go.jp/drs/login/exec?lang=ja

各機種によって異なる、添付が必要な補助写真一式の撮影

各機種によって必要な写真は異なりますが、補助資料として必要な写真は事前にまとめて撮影しておくのが望ましいです。

以下では、実際に写真を添付する必要がある項目ごとに解説します。

「(人・家屋の密集地域の上空、人・物件から30m未満の距離)」で添付写真が必要な場合は、このようにプロペラガードを装着した状態の写真を添付する必要があります。機種によっては写真添付が不要なため、必要に応じて撮影してください。

「無人航空機の姿勢及び方向が正確に視認できるよう灯火を有していること。」で写真を求められる場合は、以下のように灯火が分かる写真を添付しましょう。

灯火装置

「自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できること。」「 機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できる。自動操縦システムは装備していないが、補助者が常に飛行状況や周囲の状況を監視し、操縦者に必要な助言を行うことで安全を確保する。」を選択する場合は、カメラ上とプロポの画面が分かる写真などを添付する必要があります。

「不具合発生時に危機回避機能(フェールセーフ機能)が正常に作動すること。」は特に参考例を掲載しません。

各機種ごとにメーカーが作成している取扱説明書のうち、フェールセーフやリターントゥホームについて明記されているページを抜粋したPDFを添付するのが無難なところです。

なお、DIPS2.0上で添付できるファイルサイズは、各ファイルごとに2MBまでとなっています。2MBを超えていると添付できないため、各ファイルは事前に圧縮しておくと良いでしょう。

 

保険の加入状況の確認

引用:https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/

添付資料等は特に必要ないですが、第三者賠償責任保険に加入している場合は保険会社名等の情報を記載する必要があります。

保険加入状況は包括申請に限らず、個別申請時でも記入が求められる項目のため、今後のためにも確認しておきましょう。

保険に加入している場合は約款や被保険者証などを確認し、以下の項目についてメモを取っておくことをおすすめします。

  • 保険会社名
  • 商品名
  • 補償金額(対人):無制限でない場合は1,000,000のような桁数での上限額
  • 補償金額(対物):無制限でない場合は1,000,000のような桁数での上限額

保険加入は義務ではないものの、よほどの理由がない限りは加入しておくことをお勧めします。

その他に包括申請前に行っておくべき事前準備

包括申請は対応できる飛行方法・飛行場所が限られているため、対応範囲外の飛行は個別申請が必要です。

そして、包括申請を行う際は利用する飛行マニュアルに従って飛行しなければいけません。特に独自マニュアルなどを使用しない場合は、国土交通省が作成した航空局標準マニュアル02を使用するのが一般的です。

航空局標準マニュアル02では、飛行場所を特定しない包括申請でDID上空の飛行や夜間飛行、目視外飛行、人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行などを安全に実施する上で守るべきルールが明記されているため、必ず確認しておきましょう。

また、補助者を立てる場合は飛行マニュアルを補助者にも熟読させ、安全に飛行を行える準備を整えておくことも重要です。

【包括申請前に実施すべき事前準備リストまとめ】

  • 制度としての機体登録は済ませているか
  • 飛行許可承認申請に必要な機体登録とパイロット登録が済んでいるか
  • 追加で添付が必要な補助写真一式の撮影は済んでいるか
  • 保険の加入状況は確認出来ているか

飛行マニュアルを熟読したかドローン飛行前に包括申請でできることを理解しておこう

包括申請が通ればどんな飛行でも実施できるように思えるかもしれませんが、実際は危険度が高い飛行は包括申請を許可されていても個別申請がなければ実施できません。

しかし、場所や日時を指定しなくてもよい飛行であれば、包括申請が通った後はDID上空や夜間飛行などを最長1年までは事務手続き無しで実施できます。

包括申請は非常に便利な飛行許可申請制度ですが、ドローンを飛ばすパイロットとして航空法を始めとするルールを適切に守った上で活用することが大前提です。

自分が事務手続きのストレスに追われる機会をなるべく減らせるよう、適切に法令を遵守し、何を実施できるのかを抑えた上で、ドローンパイロットとして包括申請を有効活用していきましょう。

 

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この記事を書いた人

DJI CAMP スペシャリスト民間資格取得/webライター

2022年にDJI CAMP スペシャリスト等の民間資格取得し、
インストラクターとして登録講習機関の国家試験学科対策テキストを執筆。
現在はメンターやライターとして活動中です。
ドローンは難しく聞こえがちな言葉が多いため、
初心者でもわかりやすい記事を執筆するドローンライターを目指しています。
https://x.com/seri_nonnon

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